阪神連覇、さすがに予想できなかった『巨人の連敗』…なぜ、こんな寂しい結末になってしまったのか…3度あった橋上監督、“疑問の采配”
2026年10月4日 05時07分
まずは藤川阪神、優勝おめでとう! 苦しみながらの優勝とはいえ、球団史上初の《連覇》は文句なしの偉業達成である。監督はじめ首脳陣、選手たちの頑張り、そして強いチームを作り上げた球団編成部の勝利である。大きな拍手を贈ろう!
それにしても、10月1日に巨人との「甲子園決戦」が引き分けに終わり、阪神の優勝マジックが「2」になった時点で、こんな結末を予想した人は誰もいないだろう。2日に巨人がヤクルトに敗れ「1」となり、3日に阪神がデーゲームで広島に敗れ、その日のナイターで巨人がDeNAに敗れて優勝決定。
筆者もさすがに巨人の連敗は予想しなかった。意地でも連勝して阪神に最後のプレッシャーをかけてくると思った。なぜ、こんな寂しい結末になってしまったのだろう。あるOBはこう分析した。
「それだけ巨人にとっては甲子園決戦の引き分けのショックが大きかったということ。負けに等しい引き分けだった。選手たちも首脳陣も勝てた試合を落とした―という思いがあった。それが翌日(2日)のヤクルト戦や3日のDeNA戦の敗戦にもつながっている」
数字的には引き分けによって阪神の優勝マジックが「3」から「2」になっただけだが、阪神側から見れば残り5試合で「3つ勝たねばいけない」のと「2勝3敗でもいい」のとではプレッシャーの大きさは雲泥の差。そしてOBはもう一つ気になることを言った。
「あの試合を見ていて、巨人に何が何でも勝つんだ!という気迫、執念のようなものがあまり感じられなかった。橋上監督の采配も疑問が多かったし…」
確かに、それは筆者も感じていたことだった。試合を振り返ってみよう。
確かに、それは筆者も感じていたことだった。試合を振り返ってみよう。
◇10月1日 25回戦 甲子園球場(延長12回)
巨人 001 000 010 000=2
阪神 000 001 001 000=2
(巨)竹丸、西舘、森田、田中、中川、マルティネス、堀田、代木―大城、小林
(神)村上、木下、及川、ドリス、工藤、岩崎、石井―坂本、伏見
本=大山⑳(西舘)
巨人 001 000 010 000=2
阪神 000 001 001 000=2
(巨)竹丸、西舘、森田、田中、中川、マルティネス、堀田、代木―大城、小林
(神)村上、木下、及川、ドリス、工藤、岩崎、石井―坂本、伏見
本=大山⑳(西舘)
阪神は立ち上がりから拙攻の連続だった。苦手な巨人の先発・竹丸から1回に無死満塁、2回に無死一、二塁、3回に1死二、三塁、4回に2死二、三塁、そして5回にも無死一塁のチャンスを作りながら、不運な当たりや相手の好守に阻まれ無得点。5回を終わって0-1と巨人に1点のリードを許していた。
その日、テレビの解説を務めていた岡田球団顧問も「無死満塁は点が入りにくい―とよう言われるけど、これだけチャンスで点が入らんのも珍しいな」と呆れていた。
ルーキー竹丸にまたしてやられるのか…いや~な空気が流れた。ところが6回、巨人ベンチは竹丸に代えてマウンドに9月14日のDeNA戦、24日の広島戦に先発登板している西舘を送った。これがこの試合で見せた橋上監督の《疑問の采配》の始まりだった。
「えっ、竹丸代えるの? まだ、80球ぐらいやろ。故障か?」と岡田顧問もアクシデントを疑ったほど。そしてその西舘がいきなり、先頭の大山に左翼へ同点ホームランを浴びてしまう。
プロ野球界には『好投している先発投手を代えるのは慎重に』という格言がある。苦手な投手が交代することで「代わってくれた。ラッキー、これで打てる」と相手を喜ばせてしまい、得点されるケースが多いからだ。さらに岡田顧問は指摘した。
「先発投手をリリーフで使うのは難しいんよ。調整の仕方も違うし、場面に臨む心理も微妙に違う。先発組の投手はなかなか試合にすぐに入り込めんのよ」
なぜ、竹丸を代えたのか。なぜ、2番手が西舘だったのか。橋上監督は試合後、その2つの「疑問」について説明した。
「竹丸は心身ともにいっぱいかなと…。あそこまでよく投げてくれました。西舘の投入? 7回からはブルペンでの順番がある程度計算できているんですが、(6回の)プラス1イニング…。あそこに関しては現状の状態をとかを見て、西舘の起用になりました」
なるほどと思える説明だが、OBはそこが「大きなポイント」という。
「これがシーズン中盤の試合ならその采配でも問題はない。だが、この試合で勝たなければ逆転優勝はない―という大事な試合では、もっと必死になってあの1点のリードを守りにいかないといけない。81球で心身ともにいっぱい、だから交代―は甘い。それに7回からしかリリーフ計算が立たないのなら、もう1イニング竹丸に投げさせるべき。それか6回から一番いいリリーフ陣をどんどんつぎ込んで、3イニングの攻撃で追加点を取って逃げ切る。それしかない」
3つ目の「疑問」が1点リードして迎えた9回の巨人の守りだ。阪神は1死から中野が右翼へ二塁打。森下が四球を選んで無死一、二塁のチャンスを迎えた。佐藤が中飛に倒れたが1死一、三塁となり6回に同点ホーマーを放っている大山が打席に入った。ここで阪神ベンチは森下に代走・植田を送り、一気に勝負に出た。
植田が二盗を決め1死二、三塁。当然、大山は歩かされて、満塁で高寺との勝負―と思った。ところが、巨人バッテリー(マルティネス―小林)は大山との勝負にでた。そして3ボール2ストライクから中前へ弾き返された。センターの前進守備のおかげでサヨナラ負けは免れたが、痛恨の同点タイムリー。試合はそのまま延長12回、2-2の引き分けとなった。
「あの場面でなぜ、バッテリーは大山と勝負したのか。というより、あの場面ではその判断をバッテリーに任せるのではなく、ベンチから『大山を歩かせて高寺と勝負しろ』と明確に指示しなくてはいけない。ベンチも必死になって勝ちにいかなくては…」とOBは指摘した。
試合前のことだ。いつものように川藤前OB会長と2人、一塁側ベンチに座って巨人の練習を見ていると、橋上監督が川藤さんにあいさつにやってきた。
川藤「おお、ハシ(橋上監督)、今日が最後やの」
橋上「なんとか独走だけは防げました。きょう勝って、もちょっと阪神には冷や汗をかいてもらいますよ」
川藤「おう、その意気や。ところでハシ、巨人から話はあったんか?」
橋上「なんとか独走だけは防げました。きょう勝って、もちょっと阪神には冷や汗をかいてもらいますよ」
川藤「おう、その意気や。ところでハシ、巨人から話はあったんか?」
いきなり直球質問にさすがの橋上監督も「えっ、それは…」と声を詰まらせた。しかも隣には筆者もいる。そんなの答えられるわけないでしょ―と思いながら2人の会話を聞いていた。
橋上「いや、何も話してないですよ。本当に何もありません」
川藤「そやったら、どないするんや?」(これまた直球)
橋上「……」
川藤「来年もやってくれと言われたら、当然やるやろ?」
橋上「それは…」
川藤「やらなアカンぞ。ボロボロになりかけとったチームをここまでまとめ上げたんは、お前の力やないか。もっと胸を張ってええんやぞ」
橋上「ありがとうございます。とにかく、いい形で今シーズンを終わる。それだけです」
川藤「そやったら、どないするんや?」(これまた直球)
橋上「……」
川藤「来年もやってくれと言われたら、当然やるやろ?」
橋上「それは…」
川藤「やらなアカンぞ。ボロボロになりかけとったチームをここまでまとめ上げたんは、お前の力やないか。もっと胸を張ってええんやぞ」
橋上「ありがとうございます。とにかく、いい形で今シーズンを終わる。それだけです」
そういって橋上監督はグラウンドに戻っていった。いい形とは何を意味しているのだろう。2位で終わってもクライマックスシリーズに勝つという意味なのか、それとも勝っても負けても(優勝してもしなくても)、自分の仕事はこれで終わりなんだ―達観している言葉なのだろうか。ニコニコと物静かに話す橋上監督には、何が何でも逆転優勝するんだという燃えるものは感じられなかった。
橋上監督の去就はもう少し先の話になるだろう。その前に阪神はファイナルステージへの準備が大事。相手は巨人かDeNAか。クライマックスシリーズ、ファーストステージは10日プレーボールだ。
▼田所龍一(たどころ・りゅういち) 1956(昭和31)年3月6日生まれ、大阪府池田市出身の70歳。大阪芸術大学芸術学部文芸学科卒。79年にサンケイスポーツ入社。同年12月から虎番記者に。85年の「日本一」など10年にわたって担当。その後、産経新聞社運動部長、京都、中部総局長など歴任。産経新聞夕刊で『虎番疾風録』『勇者の物語』『小林繁伝』を執筆。
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