生成AIがあなた専属の「家庭教師」? 賢く使って学力底上げの夏に 専門家が具体策を指南
2026年7月23日 15時00分 (7月23日 16時42分更新)
いよいよ夏休み。まとまった時間が確保できる夏休みは、中高生にとって各教科の基礎を固め、弱点克服につなげられる貴重な期間です。自宅学習は、分からない時に頼る人がおらず、いったんつまずくと時間を取られてしまいがち。そんな時こそ、生成人工知能(AI)をうまく使ってみては。AI教育の専門家に、AIを優秀な“専属家庭教師”に変える方法を聞きました。
今回話を聞いたのは、「中高生のためのAIが最強の家庭教師になる自宅学習法」(日本実業出版社)の著者、佐藤雄太さん(43)。全国1600超の学校や塾で利用されている教育版AIサービス「スクールAI」を開発・運営する企業の代表だ。教育界にAIの導入を進める中で出版に踏み切ったのは、自宅学習での課題を感じ取っていたから。「学びで困り事に直面した時、気軽に相談できない」。そんな折、生成AIが登場した。「これは学習の起爆剤になる」と考え、活用の具体策をまとめた。
前提の心構え、AIはあくまで「使う」
「具体的な勉強法を話す前に、まずはAIを使う心構えから伝えたいです」
佐藤さんは本題に移る前に、こう切り出した。その理由は、AIは「薬」にも「毒」にもなる存在だからだ。自分はなぜ勉強するのか、勉強の先に何を得たいか。当たり前とも言えることを事前に確認しておかないと、「宿題の答えを教えて」などと安易な使い方に流されてしまう危険性をはらむ。「考えることをAIに『肩代わり』させる状態は、AIを使うというより、AIに使われてしまっている」と強調する。
優れた学習のサポーターとして、自宅学習でAIを使うにはどうすればいいのか。佐藤さんは「AIへの指示文(プロンプト)での工夫が肝心」と指摘する。「植物の光合成」をあまり理解できていないケースであれば、「生物が苦手な生徒にも分かりやすく教える先生」とAIのキャラクターを設定した上で「いきなり答えを教えるのは禁止。まずはヒントを」などと順守してほしいルールを追加する。佐藤さんは「指示文を少し工夫することで、理解するまでの“足場”が、指示者ごとに調整されて掛けられる。段階を踏むことで考える力を伸ばしてくれる」と語る。
指示文には工夫を、「まずはヒント」などルール追加
塾講師として千人超の生徒を指導した経験もある佐藤さん。各教科に共通する学びの基本は「理解する『インプット』と、練習する『アウトプット』」だと言う。この場合も指示文は重要だ。インプットでは「小学生にも分かるように~」「具体例を使って~」などの修飾語を加えてみる。すると、AIが示す返答の形式や詳しさを調節でき、尋ねた項目で何を理解できていないのか一つずつ確かめられる。「いつ、何度聞いてもいい。角度を変え、納得できるまで取り組んでほしい」。アウトプットする場合には、音声認識モードでAIに説明してみることを推奨する。
自宅学習だけでなく、受験対策の分野でもAIは効果的だ。佐藤さんは「一人一人に合った最適な学習計画づくりにも力を発揮してくれる」と太鼓判を押す。志望校合格に向けた勉強の本は数多くあるが、「本に登場する想定と実際の読者とは、さまざまな前提条件が異なる」。だからこそ、AIに個別最適なプランを立ててもらう。志望校や模試の結果を踏まえて得意・不得意科目の情報を入力し、計画の策定を依頼すれば、実現可能な計画を立ててくれるはずだ。著作権に配慮した上での個人利用に限られるが、入試の過去問題を読み込ませ、類似問題を作成することもできる。
佐藤さんはAIの教育的な効果を語る一方で「自分の勉強法やスタイルでうまく進んでいるところは、無理にAIに頼る必要はない」と指摘。その上で、こう助言する。「AIと共に進むこれからの時代は日々新しいものが登場し、私たち自身もアップデートし続けなければいけない。この時代を生き抜くため上手にAIを使いこなし、学び続ける力を養ってほしい」
AIを「味方」にする使い方、専門家が注意点を解説
中学生の7割超、高校生の8割超が生成AIを利用―。サイバーエージェント次世代生活研究所(東京)の調査から、中高生の実態が明らかになっている。利用率は社会人よりも10~30ポイント高いが、知識がないままだとAIが「敵」になるリスクもある。AIリテラシー教育を実践する札幌国際大の安井政樹准教授(47)に、利用上の注意点を聞いた。
安井さんは20年間、北海道や札幌市の小学校教諭として教壇に立った後、研究者に転身。道徳教育の視点からAIを利用した教育について研究する。文部科学省の学校DX戦略アドバイザーも務め、研究の傍ら年間150回以上、AIリテラシーに関する講演を行う。
安井さんは「利用に年齢制限があるという部分で、多くの保護者が誤解している」と指摘する。生成AIで最も利用者数が多い「チャットGPT」は、13~17歳が個人のアカウントを利用する場合、保護者の同意を求めている。「単なる『使っていいよ』という許可は無責任で、放任につながりかねない。保護者が利用可否を判断するには、AIを利用した場合の危険性などを子どもに伝え、その上で適切な使い方を互いに話し合うことが欠かせない」と強調する。
未成年は保護者同意が必要、「家族でルール話し合って」
使い方のルールを定めた後には、保護者が利用の“伴走支援”をすることを勧める。安井さんは「AIが生成したことをそのままうのみにして信じ切ってしまうと、インターネット社会では事故に遭う。特に最初のうちは、子どもと一緒に『ファクトチェック』して確かめることが必要だろう」と提案する。
「AIには、光と影がある」と語る安井さん。AIを味方にする使い方ができれば思考力などを伸ばせる一方、単純に答えを知るためだけに使えば、「学力低下につながる恐れがある」と言い切る。
AIと共存していかなければいけない今後を見据え、「勉強の意味を見いだし、心構えを持たせることが保護者の仕事ではないか。そうした観点を子どもが育めれば、子どもはAIを自身の成長のための道具として使おうとする」と語った。
佐藤さんの書籍「中高生のためのAIが最強の家庭教師になる自宅学習法」でも、「利用目的」「情報の確認」など七つの視点から家族で生成AIの利用ルールを事前に決めておくことが推奨されている。
(酒井博章)
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