日の丸を手にほほ笑む阿部詩。待ちに待った舞台がまもなく訪れる(撮影・納冨康)

新型コロナウイルス感染拡大を受けて史上初の延期となった東京五輪は23日、開幕する。出身大学別で夏季五輪最多のメダリスト62人を輩出し、東京五輪に57選手(OB、OGを含む)が出場する日体大とコラボレーションした長期連載の最終回(第31回)は、柔道女子52キロ級代表の阿部詩(うた、21)が登場。東京五輪のヒロイン候補は、サンケイスポーツに「〝感謝〟を忘れず戦い抜く!」と直筆メッセージを寄せ、金メダル獲得を誓った。(取材構成・石井文敏)

■勝った場面イメージ<b> </b>首都東京で57年ぶりに夏季五輪が幕を開ける。ヒロイン候補の阿部が、アスリートの声を代弁するかのように素直な思いを激白した。

「国民の皆さんに応援してもらいたい気持ちはあります。でも(コロナ禍で)厳しい状況。自分たちが闘う姿をみて後付けでもいい。五輪をやってよかった、と少しでも思ってもらえる闘いをしたいと思います」

開催都市の東京が4度目の緊急事態宣言下にある。柔道会場の日本武道館(千代田区)をはじめ、1都3県の首都圏会場が全て無観客で開催される。祝祭ムードとは程遠い形だが、掲げる目標はぶれない。大会3日目の25日、男子66キロ級で兄・一二三(ひふみ、23)=パーク24=とともに、きょうだい同日金メダルを狙う21歳は、泰然自若を強調する。

「無観客の五輪ってどうなるかわからない。でも、やるべきことは変わらない。決勝で勝った場面をイメージしている。昔から言っていた目標、夢が現実になる」

五輪内定は昨年2月末。その1カ月後、コロナ禍で1年延期が決定した。当初は先行きが見えず、練習さえままならない状況だった。だが、阿部は「落ち込むことはなかった。まだまだ進化できるという気持ちが強かった」と振り返る。ステイホームしながら、己の体と向き合う大切さに気が付いた。

1年前の柔道グランドスラムで女子52kg級で優勝した阿部詩と男子66kg級で優勝した阿部一二三(右)=2020年2月、デュッセルドルフ・ISSドーム(納冨康撮影)

■食トレ母がサポート

以前はがむしゃらに取り組むあまり、「(右肩など)体を壊すことが多かった」。また、柔道家には付きものの減量が少ないため、食への意識が希薄だった。大手食品メーカー「味の素」と契約を結んで、「詩スペシャル」の献立メニューを作成。東京都内で同居する母・愛さん(49)がサポートしてくれた。摂取する時間帯も考えながら具だくさんのキムチ鍋など栄養満点の食事で強い体を作り上げた。大きなけがのない日々を送り、5月の国際大会では圧倒的な優勝で五輪前最後の実戦を終えた。

「阿部詩という柔道を見せて一番輝きたい。攻めて攻めて一本を取る柔道で五輪に臨む」

女子52キロ級は公開競技だった88年ソウル大会を含めて五輪8大会で日本選手の頂点はない。五輪2連覇が懸かるマイリンダ・ケルメンディ(30)=コソボ=が最大の好敵手。阿部が「圧倒的な柔道」を貫き、日の丸を日本武道館に掲げる。

阿部 詩(あべ・うた)

 2000(平成12)年7月14日生まれ、21歳。神戸市出身。5歳から地元の「兵庫少年こだま会」で柔道を始める。兵庫・夙川学院(現夙川)中-夙川学院(同)高-日体大スポーツ文化学部3年。17年世界ジュニア優勝。18、19年世界選手権優勝、グランドスラムは通算6勝。得意技は内股、袖釣り込み腰。男子66キロ級の兄・一二三とともに東京五輪代表。158センチ。

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