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【エンタ目】三島有紀子監督⑪「2月5日は笑顔の日/笑わない自由もあるはず」

2026年2月5日 16時10分 (2月6日 15時57分更新)

ちなみに、わたしのプロフィール写真は微笑んでいる。

 笑顔は、誰のためのものだろう。2月5日は「笑顔の日」らしい。数字の語呂合わせだという。笑顔でいることは、周囲の空気を和らげ、本人の心持ちも明るくし、ストレスを減らすという研究結果も目にしたことがある。笑顔はいいもの、笑っていれば円満。そんな価値観が、この国には根強くある。
 映画の現場では、笑顔を強要されることはあまりないと感じる。むしろ黙っていても、考え込んでいても、そのままでいい時間が流れる。だからこそ、現場の外で求められる「笑顔」が、余計に際立つのかもしれない。
 とくに女性に向けられる「笑顔でいて」という期待は、やさしい顔をして、時に息苦しい。昨年末の紅白歌合戦で見た、ちゃんみなさんのパフォーマンスが印象に残っている。彼女はこれまで、容姿や他人の視線にさらされてきた経験も作品に昇華してきた表現者だ。その背景を思いながら見た彼女は、強く、自由で、聡明な怒りを発信しているように感じられた。
 以前、ワークショップに元アイドルの女性が参加してくれたことがある。休憩時間、隣の男性に肩を触られながら、彼女はニコニコしていた。「今、どう思ってた?」と尋ねると、「いやだった」と小さな声で言った。笑顔は仕事の一部だったのかもしれない。でも、心まで差し出す必要はないし、むしろ、心が感じたまま反応することが芝居の基本だと伝えた。
 20代の頃、職場の集まりで体を触られ、「やめてください」と言って、場が凍ったことがある。すると年上の女性が「今だけよ。そのうち触られることもなくなるんだから」と笑い、皆もつられて笑った。場は丸く収まったが、心の置き場はなかった。
 笑顔は、潤滑油になる。
 同時に、痛みを隠す仮面にもなる。笑っているから大丈夫、ではないし、笑顔は受け入れている証しでもない。
 笑顔の日に思う。
 笑顔になる自由も、笑わない自由も、同じ重さで存在するはずだ。その先に、本当の笑顔が現れる。
 (映画監督=次回は3月5日)

▽コラム「エンタ目」
 芸能の第一人者たちがつづる、中日新聞の名物コラム。各ジャンルで活躍する4人の筆者が、自身の体験から社会風刺まで幅広く記します。毎週木曜の朝刊カルチャー面に連載中。ほかの回はこちらから読めます。

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