【エンタ目】三島有紀子監督⑭魂のライブを聴いて―生きることを邪魔するな―
2026年4月30日 12時16分 (4月30日 12時25分更新)
新作映画の撮影を2月に終え、3月、4月とみんなで編集や音づくりを続けている。映画製作というのは本当に時間がかかる。そんな合間のある夜、シンガー・ソングライターの早瀬直久さんのライブに向かった。私の監督作「一月の声に歓びを刻め」で前田敦子さんが歌ってくれた「きになる」の作詞作曲をされている方である。
彼は腎臓移植を経験しており、その11周年記念ライブだった。母親から腎臓を受け取ったこと、祖父母やご両親がどこでどんなふうに生きてきたのか、ご自身が生まれてどう生きてきたか、などを歌の合間に挟んでいく。そうした家族の物語を通じて、命を受け継ぎ今があるのだということが静かに伝わってくる。
移植手術の前夜、眠れず朝が来るまでの思いをこめた「朝までのブルース」という歌も力強い。どうにもならない時間にこそ、自分のどうしようもなさに触れることができる、と彼は語る。
私自身もまた、幼少期に暗がりの中で生きていた。映画と映画館だけがそこから離れるための手がかりだった。出合わせてくれたのは父親だ。そのことを確かめるように作ったのが「一月の声に―」という自主作品だった。なにも特別苦労した人たちの話をしたいわけではない。誰もがそれぞれにいろんな思いを抱えながら、それでも誰かの命を受け継いで、今を生きているのだ。
最後に早瀬さんは、楽器を置いて「愛の讃歌」を歌った。
“命の限り、あなたを愛するの”
その声を聴きながら、思わずにいられなかった。
だから、「生きる」ということである。「生きているという行為を邪魔するな」ということである。つまり、「殺すな」ということである。
戦争は、この思いと反対側にある。
(映画監督=次回は5月28日)
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