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【ベテラン記者コラム(872)】SVリーグ初の海外公式戦…いよいよ具体像が見え始めたアジア進出の将来像は

さまざまなグッズを手に観戦に訪れたタイ現地のファン=©SV.LEAGUE

バレーボール・SVリーグは女子が10日に開幕した。昨季女王のSAGA久光が、他に1週先駆けてタイ・バンコクでA愛知との2連戦を実施。海外での公式戦はバレーの国内リーグとしては初の試みだった。

会場はネーションズリーグ(VNL)など国際大会の実績もあるフアマーク・インドアスタジアム。9月下旬の大雨でバンコク市内では大規模な洪水が発生し、当初は開催も危ぶまれた。会場自体も冠水し、エレベーターが動かないなど電気系統の不具合や、トイレの水が出ないといった被害が生じていた。それでも現地当局の協力もあって開催にこぎつけた。

試合はいずれもSAGA久光が劣勢を逆転する手に汗握る展開となったが、観客は10日の初戦が1909人、11日は1717人。6000席が用意された館内は空席が目立った。洪水による人心の落ち込みに加え、プロモーションに力を入れる時期に大雨が降って取りやめたことや、試合当日に台風襲来が予報されていたことなど、チケット販売上でマイナス要因も多かったという。

ファンの求めに応じてシャツにサインをするSAGA久光の荒木彩花=©SV.LEAGUE

アニメ「ハイキュー!!」の影響などもあり、東南アジアで日本バレーの人気は高い。VNLなどでは日本代表に、まるでホームかと思うほどの大声援が送られる。

中でもタイは、女子代表が今年のアジア選手権を制して2028年ロサンゼルス五輪出場権を獲得するなど、バレーは人気、実力とも高く、SVリーグに参戦する選手も多い。SAGA久光にはハッタヤ・バムルンスック、A愛知にもヌットサラ・トムコムと、タイ代表選手が所属している。

過去3シーズン、男子の大阪Bがプレシーズンマッチを行った際には5000席が即時完売したことも。男子日本代表の西田有志(大阪B)の人気など「日本よりもすごい」と話すのは、国際事業担当の久保田剛・業務執行理事。「タイでは、サッカーはイングランド・プレミアリーグの人気が高いが、バレーではSVリーグという数字が出始めている。男子はプレミアリーグや(バスケットボール米プロの)NBAのような憧れの目で見られている」という。


2030年に世界最高峰のリーグを目指すSVリーグにとって、タイは東南アジア進出の足がかりとなる重要な地だ。当然、今回で終わりではない。今季は来年1月に男子も同会場で大阪BとV北海道が公式戦を行う。

「もともと中長期的計画で、1年でやめることはない。3年は続けて、日本のバレーの公式戦をやる文化を(現地に)作ろうと考えている」とは大河正明チェアマン。まだ正式な決定ではないと断りつつ「女子の開幕戦はもう一度、タイでチャレンジしようと考えている」と明言する。

観客席から応援する現地のファン。手前の背番号1は日本代表の鴫原ひなた(A愛知)=©SV.LEAGUE

そのためにも1月の試合、さらに来季以降に向けて改善を進める。「最上段の200バーツ(約1000円)くらいの席はまあまあ入っていたし、価格設定に問題があるのかも。現地のイベンターに任せた方が売れるかもしれない」と大河氏。席の配置も日本のような個別ではなく、ブロックでの指定など、現地に合ったスタイルを模索する。

長期的視点で日本のバレー興行を根付かせることを目指すだけに「今回の主目的はタイのバレー協会やスポーツ庁、日本大使館、関連会社と関係を構築すること。それができたのが一番の収穫」と大河氏。関係を一層深め、臨機応変に対応できるよう、現地に駐在員を置く私案も口にした。

「現地日本法人の事務所の一角を借りるとか、ローカルスタッフでやってくれる人を探すとか、踏み込まないと。地元スポンサー獲得も腰を据えないと難しい」。その先には他のASEAN諸国での興行も視野にある。

SVリーグの進出に加え、2部のSVグロース(SVG)では来季からアジア枠選手のオンザコートルール(同時に出場できる人数の制限。現行1人)を撤廃するなど、「アジアの選手が成長できる場」をコンセプトにしようとしている。そうして成長した選手がSVリーグに上がれば、出身国での注目度が高まる。

Vリーグ時代から掛け声だけは大きかった「アジア進出」が、いよいよ具体像として見えつつある。今後の動きを注視したい。(只木信昭)

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