石黒賢 俳優業にも通ずる野菜作り「知らないことを知ることが凄く楽しい」

[ 2025年6月1日 05:00 ]

落花生を手に石黒賢 (本人提供)
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 【夢中論】芸能界随一のテニスの腕前で知られる俳優の石黒賢(59)は今、野菜作りに凝っている。おいしい野菜を育てるために知識や経験を積極的に学ぶ姿勢は、俳優業に臨む自らの思いと重なる。演技経験ゼロで芸能界に飛び込んだ若手時代。偉大な先輩俳優の存在が、石黒を大きく成長させた。(小田切 葉月)

 小麦色の肌が太陽に照らされ、額には汗が浮かぶ。種をまき、雑草を取り除き、実った野菜を収穫する。これまでトマトやキュウリ、枝豆などを育ててきた。「落花生なんかはお得だよ。殻付きを1個埋めれば、放っておくだけでたくさんできるんだから!」とジェスチャーを交えて熱弁を振るう。「日に日に育つ様子を見るのも楽しくて、めでてます。俺もジジイだね」。豪快に笑う姿は、とても生き生きとしていた。

 無農薬野菜を育てる知人の勧めで、3年前に自宅から車で約15分の畑を借りて始めた。イチゴの隣にニンニクを植えると、虫がにおいを嫌がって近づかない。大豆などの種子を搾って油を抽出した後のかすを乾燥させた「油かす」がいい肥料になるらしい…。「知らないことを知ることが凄く楽しいし、土を触ってるだけでいい息抜きになる」と充実した表情を見せた。

 知識や経験を積極的に学び、取り入れ、愛情を込めて野菜と向き合う。前のめりな姿勢は、自身の俳優業にも重なる。

 「こんなこと言ったらどうかと思うけど、俳優になりたいと思ったことはない」。主演デビュー作はTBS「青が散る」(83年)。制作にあたり、「テニスができる男の子を探している」と聞いた父で日本人初のプロテニスプレーヤーの石黒修さん(16年死去)の推薦がきっかけで芸能界入りした。爽やかな甘いマスクで注目を集め、サスペンスや時代劇など、さまざまな作品への出演が続いた。

 一方、演技経験ゼロで「自分に芸があるとは思えなかった」という若手時代。だからこそ、共演した大御所俳優たちに食らいついた。幼少期から大学までテニスに打ち込んだ、スポーツマンならではの気質もあったのだろう。「緒形拳さん、仲代達矢さん、松方弘樹さん…。いろんな先輩方に“どういうふうにやったらいいですか?”と、突っ込んで聞きまくった」と回想した。

 時代劇では、着物の着こなし方、武士の歩き方、正座の時に手はどこにつけばいいか?と質問。優しい先輩たちはしっかりと教えてくれた。聞くだけではなく、自らが格好いいと思ったしぐさはまねて演技に取り入れた。例えば、コートを着て歩く時。腰から動かしてさっそうと足を運ぶ姿は、緒形さんが参考だ。「そういったことを演技に生かし、一つの作品を作り上げる。演じることがさらに面白くなった」。先輩たちの背中を追いかけたことが演技の土台になっている。

 思わぬデビューから40年以上。今では気の良い父親役から悪役まで、どんな役もこなすバイプレーヤーとなった。年を重ねるごとに渋みも増し、力強いまなざしは健在。来年には還暦を迎える。「自分が培ってきたものを若い世代に伝えたい」という思いも芽生えながら、「“こいつが出てるなら面白そう”。そう思ってもらえるような役者であり続けたい」と力を込める。

 尊敬する先輩たちの教えや演技を“栄養”とし、自らを丹念に育て上げてきた。これからも身も心もフレッシュに、味わい深い演技を届けていく。

○…石黒にとって約30年ぶりの主演舞台「反乱のボヤージュ」の大阪公演が、1日から大阪松竹座で始まる。名門大学の学生寮での出来事を描く青春群像劇で、石黒は元機動隊で過去のトラウマを抱えながらも、学生たちと心を通わせていく舎監役。「60歳を前に、大きな劇場で座長を務められるなんてありがたい。舞台を見て、明日から頑張ろうと心の目線が少しでも上を向いてくれたらうれしい」とアピールした。共演は岡本圭人(32)ら。同所で8日まで。

 ◇石黒 賢(いしぐろ・けん)1966年(昭41)1月31日生まれ、東京都出身の59歳。高校在学中に俳優デビュー。代表作はフジテレビ「振り返れば奴がいる」(93年)など。3歳の時に初めてラケットを握り、中学2年生の時に都大会で秋篠宮さまと対戦した経験もある。08年からはWOWOW「ウィンブルドンテニス」のスペシャルナビゲーターを担当。外国の子供向け絵本の翻訳なども手がける。1メートル78。

 

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