ジョン・レノン 2025年の音質で聴くライブの「カム・トゥゲザー」

[ 2025年10月20日 12:00 ]

ライブに臨むジョン・レノンとオノ・ヨーコ Photo by Michael Negrin(C)Yoko Ono Lennon
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 【牧 元一の孤人焦点】鬼気迫るものがある。ライブでのジョン・レノンの絶唱。当時31歳。曲は「カム・トゥゲザー」。観客の興奮がひしひしと伝わってくる。のちにジョンは「みんなが本当に聴きたいのはこれなんだと気づいた」と語っている。

 「カム・トゥゲザー」はザ・ビートルズのアルバム「アビイ・ロード」(1969年)収録曲。66年を最後にライブ活動を休止したビートルズはこの曲を観客に向けて演奏したことがなかった。

 ジョンは72年、米・ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで、チャリティー・イベント「ワン・トゥ・ワン」の一環としてコンサートを行った。

 この模様はアルバム「ライヴ・イン・ニューヨーク・シティ」(86年発売)に収められているが、このほど発売された12枚組ボックス・セット「パワー・トゥ・ザ・ピープル」(CD9枚、ブルーレイ3枚)には未発表トラックの数々が収められている。

 「ワン・トゥ・ワン」コンサートは昼夜2公演で、今回、夜公演時の「カム・トゥゲザー」「イマジン」「マザー(母)」などを新たに聴けることになった。

 特筆すべきは音の良さだ。50年以上前のライブ音源がまるで最近録音されたもののような明確さ、厚みで耳に届く。

 プロデュースしたのはジョンの次男でミュージシャンのショーン・オノ・レノンと彼のチーム。ポール・ヒックスとサム・ガノンがオリジナルのアナログテープから全面的なリミックスを施し、ロブ・スティーブンスが高解像度での音源のデジタル変換を担当し、アレックス・フォートンがアビイ・ロード・スタジオでマスタリングを手がけた。

 ショーンは「ポール・ヒックスやサイモン・ヒルトンと一緒にたくさんの時間をかけ、ライブ感のある雰囲気を残しつつ、全体の音をできる限りクリーンにする最良のバランスを探った。そして、音声の修復を担当したサム・ガノンは、細部にまでこだわった驚異的な仕事をしてくれた。僕らの駆使した技術をすべて明かすつもりはないけれど、ある種の『映画のような魔法』が必要だったとでも言っておこう。とにかく最終的には、あのコンサートをこれまでで最高のサウンドに仕上げられたと思う」と話している。

 「カム・トゥゲザー」をはじめ「インスタント・カーマ」「マザー(母)」「イマジン」「コールド・ターキー(冷たい七面鳥)」などは自宅のオーディオで、おのおのの住宅事情で許される限りの大音量で聴くと、楽曲と歌唱の魅力、そして、音質の秀逸さがよく分かる。
 
 この「パワー・トゥ・ザ・ビープル」は「ワン・トゥ・ワン」コンサート昼・夜公演のほか、アルバム「サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ」(1972年)の再構築・リミックス、同アルバムのスタジオ・ジャムやライブ・ジャム、ホーム・ジャムなどで構成されている。

 聴きどころの一つがスタジオ・ジャムだ。ジョンはここで多くのカバー曲を取りあげているが、チャック・ベリー「ロール・オーヴァー・ベートーヴェン」(1956年)、カール・パーキンス「ハニー・ドント」(同年)も含まれている。前者はビートルズのアルバム「ウィズ・ザ・ビートルズ」(63年)でジョージ・ハリスン、後者は同「ビートルズ・フォー・セール」(64年)でリンゴ・スターがそれぞれリードボーカルを務めている。いずれもジョンがビートルズ初期のライブで歌っていた曲で、後者の歌唱は同「ザ・ビートルズ・ライヴ!!アット・ザ・BBC」(94年発売)に収められている。

 スタジオ・ジャムはいずれも未発表トラック。ジョンの楽しげで、はつらつとした声が胸に響く。

 ジョンが1980年に凶弾に倒れてから45年もの歳月が流れたが、すぐ近くで今、歌ってくれているかのような錯覚に陥る。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部。テレビやラジオ、音楽、釣りなどを担当。

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