【中村鶴松の鶴明times 7】先月歌舞伎座の「三谷かぶき」は試行錯誤の連続 「孤独を感じる役」

[ 2025年12月7日 09:00 ]

三谷幸喜氏が「一番難しい役」と称した竹田出雲弟子半二を演じる中村鶴松(C)松竹
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 【中村鶴松の鶴明times】歌舞伎の世界を描いて大ヒット中の映画「国宝」(監督李相日)の主人公の喜久雄さながらに“部屋子”からスターダムに駆け上がろうとする俳優がいる。中村鶴松(30)だ。一般家庭で生まれ、十八代目中村勘三郎さんの元で修業する部屋子となり、歌舞伎俳優の人生を歩み始めた。

 第7回は先月出演した「吉例顔見世大歌舞伎」(東京・歌舞伎座)夜の部「歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン)幕を閉めるな」を振り返る。三谷幸喜氏が手がけた新作歌舞伎。江戸時代の伊勢の芝居小屋を舞台に、慌ただしい舞台の裏側を描くノンストップコメディー作品となっている。「初日は初めて歌舞伎座が揺れるくらいに笑いが起きた。怖いし、やっていて孤独を感じる役だった」と、これまでにない体験をした。「今までやったことがない役柄。せりふの発し方など、新たな一面を身につけられたらと臨みました」。舞台に、共演者と、さまざまな糧を得た1カ月間について語った。

 三谷作品に出演するのは2019年の三谷かぶき1作目「月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと) 風雲児たち」以来。今回、演じたのは竹田出雲だった。前半は正体を隠し竹田出雲弟子半二として振る舞うが、後半に正体を明かし、かたき役となる難役。終盤には大きな見せ場もある。「三谷さんも一番難しい役と仰っていた」。三谷氏の指名で物語のキーパーソンとなった。

 歌舞伎座で初のかたき役。加えて三谷かぶきには、七五調に代表される“歌舞伎独特のテンポ”とは違ったテンポや間も求められる。「歌舞伎のテンポのところもあれば、ばーっと勢いで言う部分もある」。古典歌舞伎にはない、現代劇に近い新作歌舞伎ならではの速いせりふのテンポもある。他にも緩急を付けた間の取り方など、発見の連続だった。

 「今回は、せりふを飲み込んでから言葉を発すると、それが遅いテンポになる。一回、自分の中に入れてせりふを発するんじゃなくて、決まってるせりふを口に出して、おのずと気持ちを追いつかせる。いつも心がけている、心で演じることの逆のテクニックや考え方です。今月は、それをやっている段階なんです。だから自分の中で気持ち良くはないですね。でも、それも今後一つ身につけなければいけないテクニックだと思います」

 速いテンポに対応するための試行錯誤。先輩の中村獅童からは「テンポが同じになっていることがある。ばーっと言うところは言ってしまう。気持ち悪いかもしれないけど、何かが生まれるかもしれないよ」とアドバイスをもらった。

 歌舞伎座は連日大入り。終盤の見せ場には満席の約2000人の視線が一手に鶴松に注がれる。

 「罵詈(ばり)雑言を言うじゃないですか。すると劇場の360度全てから引かれて、嫌なヤツと思われる感じがある。怖いですよ。あと間を使う。自分のせりふの前にしーんとしているのは怖いんですよ。1秒が30分くらいに感じる。自分で間を持たせる。度胸試しをしているような感じ」。

 タフな経験が鶴松をさらに成長させている。次回は今回の舞台で共演し、刺激を受けた名優の姿に迫る。

 <新春浅草歌舞伎にも注目>鶴松は来年1月2日に開幕する「新春浅草歌舞伎」(東京・浅草公会堂)にも出演する。第2部では義太夫狂言の名作「傾城反魂香」に初挑戦する。鶴松は吃音(きつおん)の絵師を支える女房おとくを勤める。「しっかり(中村)橋之助さんを支えて、『奥さまより鶴松の方が愛してくれるな』と思ってもらえるくらい素敵に勤めあげたい」と意気込んだ。

 <来年2月幹部昇進&初代中村舞鶴を襲名>鶴松は来年2月1日に開幕する「猿若祭二月大歌舞伎」(歌舞伎座、26日まで)で初代中村舞鶴を襲名し、幹部に昇進する。昼の部では「弥栄芝居賑 猿若座芝居前」で猿若座若太夫を勤める。

 夜の部では「雨乞狐」で襲名披露を行う。雨乞狐は今年9年の自主公演「鶴明会」でも上演した演目。「名だたる先輩方の中で六役早替りの舞踊を一題任せていただけること、こんな光栄なことは御座いません。新たな名前の通り、歌舞伎座で舞い上がるような心震える舞踊をお見せできるように精いっぱい勤めさせて頂きます」と意気込んだ。

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