蝶花楼桃花 落語家生活20周年で新企画 「噺と対峙します」 初回は江戸人情噺「姫かたり」

[ 2026年2月19日 10:00 ]

江戸人情噺「姫がたり」の台本を手に稽古に励む蝶花楼桃花
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 【牧 元一の孤人焦点】蝶花楼桃花が落語家生活20周年を記念した新企画「桃花らくご」を4月6日、東京・新宿の紀伊国屋ホールで開始する。

 桃花は「私が落語と向き合う企画です。噺に立ち戻り、噺と対峙します。今年、45歳になりますが、50代、60代に向けて私が持って行ける噺を作りたい」と語る。

 2022年3月、真打ちに昇進。24年7月、東京・池袋演芸場で、31日連続で新たなネタをおろす企画「桃花三十一夜」に挑んで完遂した。

 「三十一夜は正直、質を問うものではありませんでした。31のネタを頭に詰め込んで、毎日、最初から最後のサゲまで行けるかどうか。でも、今回は自分の身体に噺がしっくりと落とし込まれているかどうかが問われます。かなりハードルを上げました。それに取り組む姿を見て頂きたいです」

 企画の始まりに選んだネタは江戸人情噺「姫かたり」。映画監督で落語作家の藤浦敦さんが同名の古典落語を立川談志さんのために書き直した作品だ。

 「まず言葉が難しい。藤浦さんは歌舞伎などにも精通している方で、歌舞伎で歌うようなセリフがでてくる。きれいな文章が並んでいて、それらを身体に入れることにとても苦労しています」

 藤浦さんは江戸弁の指導者でもあった。桃花は現在、藤浦さんを師事していた俳優の駒塚由衣から江戸弁の指導を受けている。

 「駒塚さんとの稽古で、例えば私が『するってえと』と言うと『全く駄目』と言われます。百回くらい言ってみて、合っているのは一、二回くらい。普通の人が聞けば分からないような微妙なニュアンスの違いで、正解にたどりつくのが難しい。格闘しています」

 会場選びにもこだわった。4月の紀伊国屋ホールの後は10月の三越劇場(東京・日本橋室町)、12月の本多劇場(東京・下北沢)。いずれも若手真打ちが独演会の場としてあこがれる空間だ。

 「格式ある老舗劇場です。落語会で上がったことはありますが、1人で上がるのは初めて。あの空間で私が責任を持って噺を提供するのはとても厳しいことですが、やらせて頂きたいと考えました」

 真打ちになって間もなく丸4年。前座、2つ目時代にはなかった思いも芽生えた。

 「寄席や落語界、後輩たちのことを思うようになりました。先輩方にやって頂いたことを後輩たちに返さなければいけない。自分が寄席でトリを取る時、助けてくれるのは後輩たちです。これからの落語界をどうするかも考えないといけない。落語界が盛り上がれば結局、自分に返って来ます。洋服を変えると気持ちも変わるものですが、私は今、真打ちを着ている感じです」

 そんな思いが具現化したのが、東京・上野の鈴本演芸場の「早朝寄席」復活への貢献だ。早朝寄席は落語協会所属の2つ目たちが毎週日曜に出演する興行で、昭和の時代の終わり頃から続いていたが、2018年を最後に途絶えていた。

 「2つ目は高座に上がれる機会が少なく、上がれても大ネタに挑める持ち時間がありません。弁財亭和泉姉さんは以前から早朝寄席復活の要望を落語協会の目安箱に入れていたそうですが、実現しませんでした。その話を姉さんから聞いて『ならば一緒にやらせてください』と申し出ました」

 桃花は鈴本演芸場の鈴木敦社長に面談を要請。その席で和泉とともに「早朝寄席を復活させてほしい」と直談判したところ、社長から「実は私も考えていた」と前向きな答えを得た。

 その交渉が実り、今年2月15日に早朝寄席が復活。それに先立ち、春風亭一之輔ら落語協会理事4人が同8日に復活記念特別公演を開催した。

 「ただ始めるだけでは駄目だと思いました。鈴本さん、和泉姉さんと話し合って、まず落語協会の理事の方々に早朝寄席をやってもらい、盛り上げたいと考えました。おかげさまで当日は満員札止めで、多くのメディアに取りあげてもらい、良い流れを作ることができました。2つ目のみなさんにはこの流れを受け継いでいってほしいです」

 このような裏方の仕事だけではなく、自身の高座にも真打ちの実力が現れ始めている。

 「ほんの少し待てるようになりました。以前は噺のどこで笑いが起きるのか分からなくて、言葉をつないでしまい、お客さんが笑う間を消しがちでした。怖くて待てなかったんです。それが、20年続けて来てようやく、ほんの少し待てるようになりました。コンマ1秒の余裕ができました」

 20周年とはいえ、まだ40代半ば。噺家としての全盛期はこれからだ。この人はきっと落語史に名を刻む活動を続けていくに違いない。まずは、噺と対峙する「桃花らくご」。必見だ。

 ◇蝶花楼 桃花(ちょうかろう・ももか) 2006年11月に春風亭小朝に入門。前座時代の「ぽっぽ」、二つ目時代の「ぴっかり☆」から、22年の真打ち昇進と同時に小朝の命名で現在の名前に改めた。23年に東京・浅草演芸ホールで、出演者全員が女性の「桃組」公演を自ら企画。首都圏の定席で出演者全員が女性になるのは初めてで注目を集めた。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部。テレビやラジオ、音楽、釣りなどを担当。

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