何度も涙をぬぐいながら--Next☆Rico吉村侑莉「泣いて強くなっていった」アイドル人生 歩みを支えた言葉

[ 2026年6月28日 20:30 ]

【画像・写真3枚目】少しそそっかしくて、誰よりも真面目--Next☆Rico吉村侑莉 新曲「TickTack」に刻む“同じものは見せない”職人の顔 (撮影・彩本 芽生)
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 9人組アイドルグループ「Next☆Rico」の吉村侑莉にとって、アイドル人生を振り返ることはそのまま人との出会いを振り返ることでもあった。第3部では、茨城で保育士として働いていた日々からアイドルへの挑戦、そして活動休止を経験した苦悩の日々までをたどる。インタビュー終盤、何度も涙をぬぐいながら語られた言葉の先にあった思いとは--。(「推し面」取材班)

 質問を投げかけると、少しだけ視線が落ちた。

 「アイドル活動をする中で、直面した壁や苦しかった出来事はありましたか」

 しばらく沈黙したわけではない。むしろ、すぐに答えようとしていた。ただ、記憶をたどるように言葉を選んでいた。

 「デビューした年に、一回だけ活動休止したことがあって……」

 そう話し始めた途端、目に涙が浮かんだ。それでも声は止まらない。何度もあふれる涙をぬぐいながら、一つ一つの出来事を丁寧に拾い上げるように語り続ける。この時間は苦しかった過去を振り返るためだけではなく、その時支えてくれた人たちへの感謝を確かめるための時間なのかもしれないと思えた。

 アイドルになる前は保育士だった。茨城で働きながら、好きだったアイドルグループのライブへ足を運ぶ日々を送っていた。

 「もっと自分にやりたいことがあるなって思ったんです」

 東京へ通うたびに感じたという。広い街にはたくさんの人がいて、たくさんの夢があった。ライブ会場で見た景色は、それまで知っていた世界よりもずっと大きかった。そんな時、応援していたアイドルから何気なく掛けられた一言が背中を押した。

 「アイドルになれそうだよね」

 何気ない言葉だった。だが、その一言は人生を変えるには十分だった。その言葉に背中を押され、親を説得し、保育士を辞めて上京した。

 安定した仕事を手放すことへの迷いはなかったのか。そう尋ねると、返ってきた答えは迷いのないものだった。

 「アイドルは今しかできないから」

 保育士は将来また挑戦できるかもしれない。しかしアイドルとして夢を追える時間には限りがある。だから挑戦した。その決断を後悔したことは一度もないという。

 夢だったステージに立った時はコロナ禍だった。お披露目はオンライン。ようやく迎えた有観客ライブでも歓声はなかった。それでも、今も忘れられない景色がある。

 「ペンライトが本当にきれいだったんです」

 当時のメンバーカラーは黄色。会場いっぱいに広がる光の中に、自分の色が見えた。元々芸能活動をしていたわけではない。ただのアイドルファンだった人間が、いつの間にかステージの上に立っていた。それでも確かに応援してくれる人がいた。その事実が何よりうれしかった。

 「始めてよかったなって思いました」。そう振り返る笑顔は穏やかだった。だが、夢がかなった先には、想像していなかった苦しさも待っていた。

 活動休止について語る場面になると、再び涙があふれた。

 「アイドルになってから、思っていたのと違うこととか、うまくいかないこととかが重なっちゃって……」。コロナ禍で思うようにライブができないもどかしさ、未経験からのダンスや歌の技術的な壁 …。声を詰まらせながらも、言葉は続く。目元をぬぐい、呼吸を整え、また話し始める。その繰り返しだった。

 そして、そんな日々の中で支えになった存在について語り始めた時だった。

 「でも、救いだったのがファンの方の言葉だったんです」

 そう言った瞬間、また涙がこぼれた。

 「『早く戻っておいで』って言ってくださったり……」

 さらに続ける。

 「メンバーも、『ゆりっぺがいなきゃ』って言ってくれて」

 言葉を重ねるたびに涙は増えていく。それでも話をやめない。その姿から伝わってきたのは苦しさではなく、感謝だった。

 活動休止中にはメンバーが外へ連れ出してくれた。一緒にご飯を食べた。一緒に過ごした。そして何度も伝えてくれた。

 「もう少し一緒にやりたいよ」。その言葉がどれほど救いになったのか。

 「こんな私でも一緒にやりたいと思ってくれる仲間がいるんだなって」

 だから戻れた。だから続けられた。

 その後もNext☆Ricoは変化を繰り返してきた。卒業するメンバーを見送り、新しい仲間を迎える。そのたびにグループの形は変わった。それでも、グループを好きだと言ってくれる人がいて、入りたいと言ってくれる新しい仲間がいた。

 「ネクストに入りたいって思ってくれる子がいるって思ったら…」。また目元に手が伸びる。「どんな壁も乗り越えていけるかなって」

 残ったメンバーで支え合い、新しい仲間と前へ進む。その繰り返しが今のグループを作ってきた。そして、その時間は一人の人間も大きく変えていた。

 「始めた頃と比べたら、本当にメンタルも強くなりました」

 そう話しながら笑う。だが、その笑顔のすぐ後にまた涙がこぼれる。

 「いっぱい泣きました」

 少し照れたように笑いながら続けた。

 「泣いて強くなっていった気がします」

 活動休止がなければ、今の自分はいなかったかもしれない? そう問いかけると、ゆっくりとうなずいた。「あの時、自分と向き合う時間ができたんだと思います」

 だから今は焦りすぎない。苦しくなったら立ち止まる。休むことも大事にする。無理をして走り続けるだけではなく、自分の心と向き合うことも覚えた。

 インタビューの最後、涙の跡が残る目元で前を見つめていた。

 茨城で保育士として働いていた頃、自分の人生がここに続いているとは想像していなかったかもしれない。それでも一歩を踏み出した。支えてくれる人と出会った。戻っておいでと言ってくれる人がいた。そして、一緒に続けようと言ってくれる仲間がいた。

 何度も涙をぬぐいながら最後まで言葉を紡ぎ続けた。

 「泣いて強くなったんです」。その一言は、アイドルとしての歩みだけではなく、一人の人間として積み重ねてきた時間そのものだった。

 誰かに救われた経験は、いつか誰かを救う力になる。今日もステージの上には、あの日「戻っておいで」と迎えられた一人が立っている。

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