小田和正 初ライブ盤に2年ぶり新曲 ♪もういちど会おうよ 皆んなで

[ 2026年9月30日 10:00 ]

ライブで観客の声援に応える小田和正
Photo By 提供写真

 【牧 元一の孤人焦点】最も胸が熱くなる瞬間は最後に訪れる。ライブのラストソング「my home town」を歌い終えた小田和正が横浜アリーナの観客に向かって叫ぶ。「また会おうぜ!」。それは小田のライブをこれから先も聞き続けたいと思うファンが待ち望んでいた言葉。大歓声に包まれる会場。音はフェードアウト。続いて新曲「きっと!」が始まる。

 柔らかな音色。長く一緒に過ごしてきたパートナー、過ぎ去った日々、旧知の人々への思いが込められたかのような歌詞。歌声はこの上なく優しい。松たか子、和田唱のバッキングボーカルが心地よい。最後に、♪そして もういちど会おうよ 皆んなで…。歌の世界の人々に語りかけた言葉かもしれないが、新たなライブに期待するファンへのメッセージのようにも聞こえる。明るい心持ちになる、最高のエンディングだ。

 ニューアルバム「きっと!」が9月30日に発売された。2025年のアリーナツアー(全国13会場28公演で約31万人を動員)の最終公演のライブ音源を収録。オフコース時代のライブ盤はあるが、個人としての発売は初めて。最後の1曲として新曲「きっと!」を収めた。明治安田企業CM曲で、曲の書き下ろしは2024年発売の「すべて去りがたき日々」以来約2年ぶり。

 アルバムはライブの「OPENING」から始まる。会場で小田の楽曲の数々に乗って小田やバンドメンバーのアニメが大型ビジョンに映し出される時間。映像のないアルバムではカットする選択肢もあっただろうが、聴いていると、この時間がライブに必要不可欠なものであることが分かる。間もなくステージに小田が姿を見せるという期待感。何物にも代えがたい思い。会場でのあの感覚がよみがえる。

 そして1曲目「ラブ・ストーリーは突然に」。冒頭から最高潮だ。1991年のドラマ「東京ラブストーリー」の主題歌。35年も前のことだが、イントロのギターの音を聴いただけでタイムスリップした気分になり、小田の熱いボーカルによってあの頃の甘く切ない感覚が再び体に湧き起こる。ライブ会場でこの曲を聴く時、動き回る小田の姿をずっと追い続けることになる。視覚が重要。ところが、アルバムでは演奏に耳を澄まし、歌声に集中する。聴覚が全て。すると、会場では聞こえなかった数多くの音が体に入ってくる。気分が高まる。心が弾む。この曲が大ヒットしたことに合点がいく。

 曲と曲の間のトークはカットされている。ライブ中の小田の話は楽しく、それを聴けないのは残念だと思うファンがいるかもしれないが、より音楽に没頭できるという点でこれが正解だろう。

 「たしかなこと」はイントロのアコースティックギターが印象的だ。その音だけで歌の世界に引き込まれる。個人的にライブ会場では演奏曲のひとつとして通り過ぎてしまった感があるが、こうして改めてじっくり聴くと、深く胸に染みこんで来る。小田の歌は柔らかく温かい。年を重ねた現在の声が曲にぴったりはまっている感じ。♪忘れないで どんな時も きっとそばにいるから…。そう語りかけられると、涙腺が緩む。

 「Yes─No」はイントロを耳にしただけで胸がときめく。オフコース時代の1982年の日本武道館以来、この曲の生歌を何十回聴いて来たことだろう。ソロ活動後、記者として福島でも静岡でも大阪でも熊本でも沖縄でもこの曲を聴いた。小田の歌声は年を重ねるごとに少しずつ変化したが、心を揺さぶる強さは全く同じだ。あの日の横浜アリーナでは多くの人たちが一緒に歌っていた。歌わずにいられない気持ちがよく分かった。一緒に歌うと、過ぎ去った日々が戻って来るようだった。小田は曲の途中で何回も「ありがとう」と言ったが、感謝の思いを伝えたいのはわれわれファンの方だ。この音源には小田を長年にわたって追い続けて来た人たちの多幸感が詰まっている。

 DISC1は「君住む街へ」で終わり、DISC2はアンコールの「愛を止めないで」で始まる。続いて「YES─YES─YES」「hello hello」「今日もどこかで」「いつも いつも」。全て忘れがたき曲ばかり。このアルバムで再確認することができる。自分が長く愛して来た音楽がどれほど素晴らしいか、ということを。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部。テレビやラジオ、音楽、釣りなどを担当。

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