18年ぶりの個展「知らない場所へ向かう楽しさ」 美術家加藤美佳さん
2024年7月12日 05時30分 (3月6日 16時12分更新)
美術家の加藤美佳さん=津市=による18年ぶりの個展が、東京都港区の小山登美夫ギャラリー六本木で開かれている。創作を再開してから約10年。ささやかな日常への喜びが、展示空間を満たしている。
1975年生まれ。少女の人形を粘土細工で作り、憂いのある表情を大きく描いた正方形の絵画「カナリヤ」(99年、東京都現代美術館蔵)は発表当初、大きな話題を集めた。愛知県立芸術大の在学中から注目され、国内外の展覧会でも出展を重ねてきた。
だが、2010年代に入って創作はいったん途絶える。きっかけは出産だった。「自分で勝手に(創作の)幅を狭めて苦しんでいたんです。子どもに“頑張っている”姿を見せたくなかった」。一方で子どもと日常や自然を楽しむ中で、「描きたい」との思いがわき上がる瞬間もあった。「描かなくなったきっかけも子どもの存在だったけれど、描くようになったきっかけも、子どもの存在だった」と笑顔で振り返る。
新作「とらしっぽリバー」は、創作を再開してから10年という時間が、「リバー」(川)の流れとして迫ってくるインスタレーション(空間芸術)。トラのうねったしっぽを連想させる巨大な木のモザイクテーブルの上に、川辺や浜辺で拾った石や貝殻、自宅の庭で集めた木片や枝を並べた。一つ一つの小物には、絵の具の下地材を何度も塗って平面を作り、子どもの姿など日常の光景を描いた。当初は作品を制作している意識はなく、展示にあたっても「着地点は頭になかった」と打ち明ける。
会場では、粘土や貝殻で作った別のオブジェ作品と、作品をさまざまな角度から撮った写真も展示。2000年代の作風とは違っても、生命や自然、時間のはかなさを目に残そうとする営みは変わらないように見える。「教えてもらって描いていた絵画(の制作)をいったん捨てることにしたんです。今は知らないところに向かっている楽しさがあります」。20日まで。
(宮崎正嗣)
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