戦国武将や大名、高僧ら時の有力者が手がけた日本庭園
中部地方(愛知・岐阜・三重・静岡・長野・福井・滋賀)
各地に残る庭園を中心に、楽しみ方をご紹介します

    THE GARDEN ~日本庭園マップ~

    INTERVIEW 中部の庭園は「なぜ」魅力的なのか

    戦国に花開いた文化

    千田嘉博・
    名古屋市立大教授に聞く

    日本庭園といえば京都のイメージが強く、中部地方にも戦国武将が手がけた歴史的な名園が多く残っていることはあまり知られていません。江戸時代の尾張藩では豊かな庭園文化が花開き、時の将軍も驚くほど。中部の庭園の魅力を、戦国時代に詳しい千田嘉博名古屋市立大教授に語ってもらいました。

    千田嘉博

    ■ プロフィール

    千田嘉博(せんだ・よしひろ)

    1963年、愛知県豊田市生まれ。奈良大卒。
    愛知県名古屋市見晴台考古資料館学芸員、国立歴史民俗博物館助教授、奈良大教授などをへて現職。

     戦国時代は「戦いばかりで悪い時代」と思われがちですが、実は京都が独占していたお庭に代表される文化力が、一斉に全国へと広がっていった時代なんです。古代から中世の前期までは各地の富が、全国の荘園を通じて京都に集められた結果、京都には壮大な寺院や公家のお屋敷が立ち並び、見事なお庭が造られました。ところが下克上の世の中になると「それはおかしい」と中央に税金を納めなくなり、地方が自立して個性が生まれました。各地で武将が活躍し、領地に立派な庭園を造るようになり、京都からは文化人や技術者が各地に流れました。

    戦国時代を代表する庭園は
    いずれも中部地方に

    戦国時代の代表的なお庭である「日本三大武将庭園」はいずれも中部地方にあるそうですね。

     はい。中部は基本的に経済力が強いし、地理的にも京都に近くて濃密な人的ネットワークがあったので京都の文化を吸収する上で一番恵まれた地域でした。

     北畠氏館跡庭園(三重県津市)と旧秀隣寺庭園(滋賀県高島市)の二つを造った細川高国は室町幕府を取り仕切る管領の地位にあり、京都でも一流の文化人でした。もう一つの一乗谷朝倉氏庭園(福井県福井市)がある越前朝倉氏の城下町は、応仁の乱で荒廃した京都から逃れた公家らの手で華やかな京文化が花開いていました。

    名古屋城では江戸初期の大名庭園である二之丸庭園の復元が進んでいます。

     尾張藩の初代藩主徳川義直が手がけた二之丸庭園は武士が平和に世の中を治める時代になった象徴です。江戸初期から日本屈指の大庭園が整備され、池のほとりに茶室が立ち、奥には名古屋城の天守がそびえる世界が広がっていました。3代将軍徳川家光が江戸から京都へ上洛(じょうらく)する途中で名古屋城に立ち寄り、庭に感動し江戸城にも新たな庭を造るよう命じたほどです。

     現在の名城公園の一帯には「下御深井御庭(したおふけおにわ)」と呼ばれる広大な庭園があり、広さは石川県金沢市の兼六園の4倍とも。殿様のテーマパークと呼べる空間で、池に舟を浮かべて女官と遊んだり、愛知県瀬戸市から陶工を呼び寄せて窯を造って自ら陶芸を楽しんだり、宿場町を再現した街並みがあったり。名古屋のいいところを集めたような場所で、藩に仕える侍や町人を招くこともありました。尾張藩にはこんな豊かな庭園文化があったにもかかわらず、忘れ去られてしまっているのは本当に残念です。

    名古屋城二之丸庭園(名古屋市)

    自然と文化が調和する
    「特別な空間」

    なぜ時の権力者はそんなに庭が好きなのですか?

     日本庭園は和歌を詠む舞台になったり、お月見など特別な宴会を催したりする文化的な装置でした。自らの教養や権力を見せつける上でも、日本庭園に勝るものはありませんでした。

     庭園とセットで造られた会所(かいしょ)と呼ばれる建物は、身分の上下を超え、車座で話ができる無礼講的な空間でした。庭園は時の権力者が「あなたは特別ですよ」と心遣いをするおもてなしの空間でもあったのです。

    信長公居館跡(岐阜市)

    日本庭園を楽しむ
    ツアーのご案内

     中日新聞グループは、「THE GARDEN」に掲載した日本庭園を巡るバスツアーを企画しています。
     これまでに80回を超すツアーが開催され、延べ2700人あまりが参加。四季折々の日本庭園を楽しみました。

    北畠氏館跡庭園を見学するツアーの参加者たち

    参加者の声

    • 自然と調和して立派な庭園が行き届いた手入れでずっと維持されていることに感激しました

    • 3庭園回れた日程に感謝。特長ある庭園の特色を比較できてうれしい

    各地の日本庭園を舞台にしたツアーを次々と開催中です。
    詳細は中日ツアーズの公式ホームページをご覧ください。

    参加者募集中のツアー