三回、一邪飛に倒れる阪神・森下翔太。投手はDeNA・尾形崇斗=横浜スタジアム(撮影・福島範和) (セ・リーグ、DeNA1-0阪神、14回戦、7勝7敗、4日、横浜)阪神はDeNAに今季6度目の零封負けを喫した。〝代打の神様〟として虎党から絶大な支持を獲得し、2023年から3年間日本ハムの1軍打撃コーチを務めた八木裕氏(61)=サンケイスポーツ評論家=は、DeNA・尾形崇斗投手(27)の力投に屈した阪神打線に言及。「空振りOK」の割り切ったアプローチを求めるとともに、パワー系投手への対策として「魚雷(トルピード)バット」の使用も選択肢の一つと提案した。
0-1という、あまり良くない負け方で4連勝が止まったが、内容的にはハードラック(不運)という試合だった。決して引きずる必要はないが、気になったのは尾形に対する打撃だ。
私が日本ハムで打撃コーチを務めていた頃、リリーフだったソフトバンク時代の尾形とは何度も対戦してきた。先発としてじっくり対策を立てる相手ではなかったが、ストレートの強さは当時から際立っていた。DeNAへ移籍した今季は先発へ転向し、セ・リーグにはあまりいないパワー系速球投手となっている。まだまだこれからの投手だが、投げるボール自体は非常にレベルが高い。
阪神は6月21日の前回対戦では5回5安打2失点で黒星を付け、尾形は4四球と制球に苦しんでいた。四球を与えないためにどんどんストライクゾーンで勝負してくることは、ある程度は予想できていたはずだ。
だからこそ阪神打線には、もっと「割り切り」が必要だった。あれだけ球威のあるストレートを投げる投手になると、ボールを見て判断して打とうとしても差し込まれてしまう。ストレート一本に絞り、変化球は空振りしても構わないぐらいの思い切ったアプローチが必要になる。早いイニングから、その割り切りをチーム全体で共有してもよかったのではないか。
打線の中でも大山だけは、ストレート一本に絞り、変化球は「空振りOK」という姿勢であったように感じた。そういうアプローチをされると、バッテリーは意外と嫌なものだ。終盤には大山に対して変化球中心の配球になり、七回の左前打にもつながった。
そして、私がもう一つ考えるのが「魚雷(トルピード)バット」を使ってはどうかということだ。もちろん普段から練習し、使い慣れていることが前提になる。それでも、尾形のようなパワー系投手が相手だと分かっているなら「この投手専用で使う」という考え方はあってもいい。
芯部分が手元に近くなる魚雷バットは、振り抜きやすく、差し込まれたり詰まったりすることも軽減できるといわれている。ストレート一本に絞る打撃とも相性は悪くない。芯に当たる可能性を少しでも高められるなら、一つの武器になる。
全員が使う必要はない。ただ、まだ使っていない選手や手応えを感じている選手なら、試してみる価値はある。今の時代はそういう選択肢を持てるのだから、準備しておいて損はない。
七回の元山の左前打での大山の本塁突入も、田中三塁ベースコーチの判断は悪くなかった。難しい捕球体勢から、度会が素晴らしい返球をした。村上の好投も含め、悲観する敗戦ではない。
ただ、尾形のようなストレートで押してくる投手への攻略法は、今後も必要になってくる。そこへの準備が、次の対戦では勝敗を分けることになるだろう。(サンケイスポーツ評論家)
■魚雷バット 打球が最も飛ぶ芯の位置「スイートスポット」を打者の手元近くにずらし、バットの先端が細く「魚雷」のような形状をしているのが特徴。操縦性が向上し打球速度、飛距離が格段にアップするといわれる。ヤンキースのゴールドシュミット、ボルピらが使用するなど昨季MLBで〝ブレーク〟。マンフレッド・コミッショナーも「野球界にとって間違いなく良いこと」と話していた。NPBでも昨季、阪神・大山らが試すなど大きな話題となったが、定着はせず。今季は西武・ネビンらが主に使用。球宴第2戦では日本ハム・レイエスが使用して本塁打を放った。