【内田雅也の追球】「詰めの1球」の教訓

[ 2025年8月16日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神5-6巨人 ( 2025年8月15日    東京D )

<巨・神(19)>7回、代打・中山に同点2ランを打たれるハートウィグ(撮影・沢田 明徳)
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 逆転で敗れた阪神には「あと1球」の詰めの甘さが目立った。

 坂本勇人の3ラン、中山礼都の2ラン、いずれも代打に浴びた2本塁打はともに2ストライクと追い込んでからだった。

 坂本には伊藤将司が3ボール―2ストライクのフルカウントからのカットボールを運ばれた。中山にはグラント・ハートウィグが1―2から内角スライダーをもっていかれた。

 さらに、2点リードの7回裏に3番手で登板したハートウィグが先頭の甲斐拓也に与えた、この夜唯一の四球は0―2からだった。この四球が直後の同点2ランにつながったわけだ。

 そしてさらに、同点の8回裏に登板した湯浅京己が浴びた連打と決勝犠飛のカウントはそれぞれ、0―2、2―2、1―2とすべて追い込んでからだったのだ。

 決め球を打たれたという悔恨は投手たちにも、捕手・坂本誠志郎にもあるだろう。

 先に書いた「詰めの甘さ」は将棋の「詰み」に由来している。相手の王将を動けなくして勝利を確定させるのを「詰み」という。ところが詰みがあるのに、逃してしまうと逆に自分の王将が危うくなる。逆転負けを食うという警句になる。

 <優勢を意識した時が危ない>と将棋界歴代2位の通算1433勝、十五世名人の大山康晴が本紙に書いている。1965(昭和40)年、南海(現ソフトバンク)―巨人の日本シリーズ第2戦(大阪)の観戦記『王将 球場を行く』だった。

 南海が4―0リードから長嶋茂雄への四球をきっかけに逆転負けを喫していた。<相手は劣勢を挽回するために死に物狂いでくる。少し挽回されると優位に立つ側は、まだ有利なのに自分の方が不利になったと錯覚してしまう。そしてあわてる。逆転劇はここに生まれる>。

 この夜の阪神の展開に似ている。4回表に4点を先制して山崎伊織を降板させた。伊藤将は5回まで1安打無失点と好投していた。誰もが勝ち試合と優勢を意識しただろう。巨人は必死にきた。ここに危ない落とし穴が潜んでいたのか。

 嫌な敗戦ではあるが、2位巨人とは11ゲームの大差がある。まだまだ独走は揺るがない。ただ、リーグ優勝、その後のクライマックスシリーズ、日本シリーズに向けても教訓にしたい敗戦となった。 =敬称略=
 (編集委員)

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