「ジョックロック」という魔曲が甲子園球場を揺るがした夏の記憶

[ 2026年7月25日 22:30 ]

第88回全国高校野球選手権大会準々決勝<智弁和歌山・帝京>9回、3ランを放った智弁和歌山・橋本良平はガッツポーズ<撮影・恵守 乾>
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 【君島圭介のスポーツと人間】

智弁和歌山「ジョックロック」迫力の応援動画

 智弁和歌山吹奏楽部の現部長である藤井音寧(ねね、2年)さんが大好きな瞬間があるという。

 「ジョックロックが流れたとき、球場が“来た!”って一瞬で空気が変わるんです。凄い曲を受け継いで来たなと思います」

 全国にチャンステーマは数あれ、魔曲と認められるのは「ジョックロック」を筆頭に数曲しか存在しない。球場全体に逆転のドラマを求める期待感が高まり、その圧が相手選手の足をすくませ、味方打線の士気を最高潮にまで引き上げる。

 高校野球ファンならそれぞれに智弁和歌山のジョックロックに思い出があるはずだ。

 2006年夏の甲子園準々決勝・帝京戦では9回に8点を奪われたが、最終回に橋本良平の3ランで追い上げると、代打・青石裕斗のタイムリーで同点、満塁から古宮克人の押し出し四球で5点を奪い返してサヨナラ勝ちした。

 2019年夏の甲子園2回戦・明徳義塾戦は0―1の7回、同点とすると細川凌平、根来塁、東妻純平の1イニング3本塁打で一気に勝ち越し、7―1で勝利した。

 その壮絶な逆転劇の記憶にはいつもジョックロックが流れている。

 魔曲となったのは智弁和歌山がこの曲を大切に育てた結果である。試合展開と打線の状態を追いながら演奏開始を慎重に判断する。流れても“またダメか…”が続けば魔力も失いかねない。

 ときに“出し惜しみ”と言われるほど、絶妙な場面でしか演奏しない。演奏を始めた瞬間に逆転する成功体験を重ねたことで、相手が「自分たちもやられるのか…」と恐怖に飲み込まれ、味方は「俺たちもできる」と自信をみなぎらせる。

 まさに吹奏楽部、応援団、チアリーダー、応援の生徒たち、そして応援指導の先生たちが育て上げた名曲なのだ。

 その力はグラウンドにとどまらない。

 吹奏楽部の藤井部長は言った。「演奏する自分たちもテンションが上がる。テンポ、リズム感が大好き。試合終盤で指揮者はもう腕が上がらない。楽器を演奏する体力もなくなっていく。でもジョックロックが流れた瞬間、どんなに疲れていてもみんな笑顔になるんです」と教えてくれた。

 応援する側も鼓舞する。藤井部長は「私たちにとっての魔曲であるんです」と胸を張った。
 

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