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ボクシング世界王者になるための5つの条件…かつて敵地でベルトを奪い取った男が言った

[ 2026年10月2日 15:21 ]

3-0で判定勝ちした井上拓(左)(撮影・長久保 豊)
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 【君島圭介のスポーツと人間】

 プロボクサーの越本隆志氏は2006年1月29日、地元福岡の九電記念体育館で、WBC世界フェザー級王者・池仁珍(韓国)を2―1の判定勝ちで下し、当時日本人歴代最年長の35歳で世界王者になった。

 後日、元WBAジュニアウェルター級(現スーパーライト級)王者の平仲明信氏と食事をした際、越本氏の偉業が話題になった。

 平仲氏は「世界王者には5つの条件が揃わないとなれない」と言った。努力、才能、金、運、タイミングがそれだ。

 「越本くんは努力と才能と運だけで世界チャンピオンになれたんだから凄いよ」

 越本氏は父が経営する福岡県福津市の福間スポーツジム(現Fukuokaボクシングジム)から地元のリングで世界王者になるとことにこだわり、なんと42戦目でやり遂げた。世界戦のファイトマネーはなかった。ケガで満身創痍(そうい)の肉体は明らかにタイミングも逸していた中での快挙だった。

 「でもね…」平仲氏は続けた。「僕は努力と才能だけで世界の頂点に立ったんだよ」

 沖縄在住だった平仲氏は18戦目でイタリアでの世界奪取に挑戦したが、王者から2度のダウンを奪いながら露骨な“地元判定”の前に敗れた。

 その後、世界を目指し続けたが、沖縄の小さなジムには世界戦を招致する資金力どころか、挑戦する政治力もなかった。

 それでも諦めず、平仲氏は自ら交渉役となってカバンを抱えて飛び回り、1992年4月10日、3年かかって世界再挑戦を実現すると単身メキシコに乗り込んで1回KO勝利。地元ひいきを許さないゴングと同時の猛攻でベルトを奪いとった。その執念たるや…。

 2026年9月27日、WBC世界バンタム級のベルトを争って、王者・井上拓真(大橋)と挑戦者・那須川天心(帝拳)が激突した。

 努力、才能、金、運、タイミングのすべてが備わった両者の激戦は前回対戦に続いての名勝負の末、拓真に軍配が上がった。

 敗れた天心に何が足りなかったのか、私のような凡人には想像もつかない。もしかしたら拓真という超絶技能の持ち主が相手だったという“運”がなかったのかもしれない。

 ただ、5つの条件がそろわなくても世界王者になれることはすでに先人によって証明されている。

 越本氏は夢をかなえたとき、こう話していた。

 「僕は自分が人より優れたボクサーだとは思いません。だけど諦めの悪さだけは、たぶん日本一だと思います」

 5つの条件を満たしてすんなり世界王者になったとしても人はそれほど感動しない。不可能を打ち砕いて頂点に立ったとき、震えるほど人の胸を打つのだ。(専門委員)

 

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