「豊臣兄弟」本能寺の変“夜間ロケ敢行”の狙い「本火の迫力」俯瞰ショットも実現“疲れた信長”演出絶賛

[ 2026年7月12日 20:45 ]

「豊臣兄弟!」チーフ演出・渡邊良雄監督インタビュー

大河ドラマ「豊臣兄弟!」第27話。燃え盛る本能寺、疲れ果てた織田信長(小栗旬)は自刃し…(C)NHK
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 俳優の仲野太賀(33)が主演を務めるNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」(日曜後8・00)は12日、第27回「本能寺の変」。天正10年(1582年)6月2日に起きた「戦国最大のミステリー」が描かれ、前半最大のクライマックスを迎えた。俳優の小栗旬(43)が節目となる10回目の大河出演で人間味あふれる新たな織田信長像を創出。インターネット上には“小栗信長ロス”が広がった。作劇は信長の甥・織田信澄が変事に関わる斬新な展開で、撮影もロケを敢行しての本物の火や飛び蹴りのシーンにワイヤーアクションを用いるなど異色の演出。同回を担当したチーフ演出・渡邊良雄監督に舞台裏を聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 NHK連続テレビ小説「おちょやん」などの八津弘幸氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ通算65作目。“天下一の補佐役”豊臣秀長を主人公に、豊臣兄弟の絆と奇跡の下克上を描く。兄・豊臣秀吉役は俳優の池松壮亮が演じる。

 第27回は、織田信長(小栗旬)は戦国最強と謳われた甲斐武田氏を滅亡に追い込み、三男・織田信孝(結木滉星)に四国攻めを命じる。一方、備中で毛利攻めの任にあたる羽柴秀吉(池松壮亮)は戦の総仕上げのため、信長を連れてくるよう羽柴小一郎(仲野太賀)に要請。小一郎は遠路はるばる安土へ向かう。折しも、安土城に徳川家康(松下洸平)を招いていた信長だが、食事に毒が盛られたことが発覚。饗応役の明智光秀(要潤)が首謀者をかばっていると察し…という展開。

 渡邊監督は“新解釈”が反響を呼んだ第8回「墨俣一夜城」(3月1日)を担当。「この時もロケで本火(ほんび)(本物の火)を使って撮影して、それをベースにCGを加えて墨俣城が燃える様子を表現しました。本火が映像や芝居にもたらす力は、やはり大きい。その経験から『本能寺の変』でも同じようにしたいと考えていました」と狙いを説明。信長が火に囲まれる一連のラストシーンは、ロケ(オープンセット)で収録した。大河の「本能寺の変」でロケを行うのは近年異例で、小栗も「(ロケ実施は)非常に光栄に思います。本火に囲まれているので、画の迫力が全く違いますよね」と手応えを示していた。

 ロケ地となったのは、時代劇のオープンセットが建ち並ぶ、国内有数の野外型ロケ施設「ワープステーション江戸」(茨城県つくばみらい市)。今回のセットには屋根がなく「カメラに映らないため、屋根を造る必要がない」「俯瞰ショットのため」「本火を使うため、熱気がこもらないよう上部を開けておいた方がよい」の3点が理由。未明(早朝)に発生した「本能寺の変」を撮るには、日中のロケは困難。自動的に夕方以降、半日のナイトロケとなった。ラストの俯瞰ショットはドローンを駆使した。

 ロケ部分のオンエアは、襲撃された信長が敵兵を斬りながら渡り廊下を抜けた後のシーンで「光秀の幻影と対峙~自刃」のラストの約7分。信長を囲む壁の向こう側で燃えているのが本火。キャストの安全は当然確保されている。

 「ブロックごとに演者さんのお芝居や動き、カメラ位置や照明を全部確認した後、本番だけ火をつけて撮っていく形。本番はほぼ一発OKでした」。映像上は本能寺全体が燃え盛っているように見えるが、本火使用といっても、もちろん炎は機器で制御されており、実際にセットが燃えているわけではない。

 信長は名もなき民の幻影も目にしたが、尾張統一を進める際の「岩倉城攻め」(第2回・1月11日)にさかのぼる。この時から「岩倉城下に火を放ち、町をすべて焼き払え」と命じていた。

 「その冷酷さが織田政権を大きくしましたが、信長もやはり人間。『豊臣兄弟!』においては、特に初期、市には本心を吐露する、人間味を描いてきました。本能寺で“疲れたわ”という言葉が出たのは恐怖政治の限界、信長が信長という人間を演じ続けることの限界を痛感したからだと思うんです」

 疲弊し、そして今際の際、脳裏に“新しき世”を託せる羽柴兄弟がよみがえる信長。今作が新しいキャラクター像を提示した“孤高のカリスマ武将”の最期を「見事なまでに体現してくださいました」。今回が初タッグとなった小栗を絶賛してやまない。

 小栗をはじめキャスト一丸の文字通りの“熱演”も相まって、大河ドラマ史はもちろん、エンターテインメント史に残る「本能寺の変」が誕生した。

 次回は19日、第28回「急げ!秀吉」。羽柴秀吉の「中国大返し」が描かれ、後半の幕が上がる。

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