バズりより「歌で返す、昭和の親父」--Palette Parade葵うた 空席の恐怖を乗り越え…泥臭く走る5周年

[ 2026年7月30日 20:30 ]

【画像・写真3枚目】まぶしさの裏にある“影と熱”--Palette Parade葵うた 新曲「夏がほどく夜」が「特別にしてくれる」瞬間
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 5年間を祝うだけではなく、その先もステージに立ち続ける意思をどんな景色で示すのか。9月8日に「Palette Parade」はLINE CUBE SHIBUYAで5周年ワンマンライブを行う。葵うたの3部作、最終回。ワクワクより先に浮かぶ空席への怖さ、流行に迎合しない音楽への思い、そして理想のライブを実現するために始めた地道な準備に迫る。(「推し面」取材班)

 「今日この後、夏目志穂ちゃんとランニングします」

 5周年公演に向けた準備を尋ねた時、返ってきたのは新衣装や演出の話ではなかった。

 夏フェスを終えた楽屋で、夏目と「体力ないよね」と顔を見合わせた。事務所へ集まる日には近くを一緒に走ろう。そんな約束を交わしたという。

 大きなホールへ向かう道は、きらびやかなステージの上から始まるわけではない。取材後、二人で舗道を蹴るところから始まっていた。

 LINE CUBE SHIBUYAを前にした今の気持ちは、期待よりも重い。

 「プレッシャーかもしれないです。人が全然来ないんじゃないかみたいな気持ちもやっぱりあって」

 言葉を濁した直後、頭の中にある景色を隠さず口にした。

 昨年のZepp DiverCity (TOKYO)での周年公演は、想像していた以上の人が足を運び、同じ時間を過ごしてくれた。今も映像を見返す。画面の向こうには、歓声と光に包まれた客席がある。

 その記憶は背中を押す。だが、昨年の景色が今年も約束されているわけではない。大きな会場を思うほど、まだ埋まっていない座席まで目に浮かぶ。

 ライブアイドルが新しいファンと出会う難しさも感じている。SNSでは、一つの投稿や楽曲が広がることで、一夜にして名前が届くことがある。

 Palette Paradeの音楽は、今の流行とは少し違う方向を向いている。だからといって合わせるつもりはない。

 「バズりに乗って集めたライブじゃなくて、パレパレの音楽を好きって言ってくれる方と過ごしたいと思っています」

 強い言葉だった。

 バズそのものを否定しているわけではない。知ってもらう努力は必要だと分かっている。写真をなかなか載せず、ファンから注意されることもあるため、苦手なSNSも「もう少し頑張りたいです」と続けた。

 「歌でお返ししますっていう昭和の親父みたいな考えをしているので」

 そうも言って、そして豪快に笑った。流行に合わせないことと届ける努力をしないことは違う。音楽の軸は曲げず、その音を見つけてもらうための扉は、自分の手で少しずつ増やしていく。

 取材前日には、周年公演のセットリスト会議があった。プロデューサーが用意した土台を囲み、メンバー全員で約4時間話し合った。それでも、まだ完全には固まっていない。

 「ふんわりワクワクしてこないというか」

 完成した舞台を想像するには、形になっていない部分が多すぎるのだろう。ステージ上の数十分をつくるため、見えない場所では何時間もの言葉が重ねられている。

 LINE CUBE SHIBUYAに立ったのは、対バンライブで一度だけ。細かな記憶よりも、「ただただ大きいホール」という感覚が残っている。

 「挑戦ですよね」

 過去の周年公演も、ほとんど経験のない会場へ飛び込んできた。だが、5周年にはこれまでと少し違う意味がある。

 「これからもアイドル業界で頑張っていきたいっていう証明のライブにもなるといいなと思っています」

 5年間続けた事実を誇るためだけの証明ではない。6年目からも歌い続ける意思を、ステージの上で形にするための証明である。

 当日、作りたいのは、ただ盛り上がるだけの景色ではない。

 応援してきた一人一人が、「こんなこともあったな」と、それぞれの日々を思い返せる時間。うまくいった日も、立ち止まった日も、そのすべてが今につながっていたと感じられる、温かい客席を思い描く。

 「まあ、紫の人多めだったらうれしいですけど」

 笑い声を挟み、すぐに言葉を続けた。

 好きなのは、さまざまな色が混ざる景色だ。声を出す人、踊る人、オタ芸を打つ人、跳ぶ人。楽しみ方を一つに決めず、それぞれが「楽しい」と思える空間にしたいという。

 その景色を最後まで見届けるには、気持ちだけでは足りない。

 「自分がしたいことは、体力がないとライブでできないんですよ」

 後半まで動けるよう、無意識に序盤の力を抑えている。やりたい表現を身体の都合で小さくしている自分がいる。最初から最後まで出し切るため、走ることを決めた。

 過去には、咳が続いて肋骨にひびが入り、治り切らないままライブを重ねたことで骨折まで悪化した。

 「ちょっとだけ休んでました」

 軽い口調の奥に、ステージに立つ身体の危うさがのぞく。無理を重ねることではなく、万全の状態で歌い切ることも、5周年へ向けた大切な準備である。

 満員の客席も多色のペンライトも、願うだけでは生まれない。4時間話し合い、苦手な発信に向き合い、身体を整え、仲間と走る。その一つ一つが、9月8日の舞台へ続いている。

 この日の取材後には、夏目志穂とランニングへ向かった。紫を含む幾つもの光が揺れる景色を目指し、まずは今日も小さな足音を重ねる。

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