DeNA・牧秀悟は9月22日の中日戦で自己最多30本塁打をマークした 離脱を離脱で終わらせなかった。脚の故障で戦列を離れたシーズン序盤の約40日間は、DeNA・牧秀悟内野手(28)にとって打者として進化するための時間になった。
契約メーカーのシュアプレイに発注したのが、ブルージェイズの岡本と同じ型のバットだった。「ここまでガラッと変えたのはプロに入ってから初めてですね」と思い切った。
米大リーグ挑戦1年目にして33本塁打を放った2歳上のスラッガーとは公私で親しく、3月のWBCでは2大会連続でともに日の丸を背負った。
さまざまな選手のバットを試し、最も感覚がしっくりきたという。長さ85センチ、重さ880グラムは、もともと使っていたバットと同じ。先端をくり抜いたのが変更点で、重心の位置もミドルトップからミドルに移した。
グリップの直径は岡本のバットよりわずかに細いが、0.1ミリ単位で微調整することで、芯の位置が下がりすぎないよう細工を施した。強い打球を生みやすいポイントが、これまでより少し広がった形だ。
牧秀悟は6月初旬の戦列復帰から〝岡本モデル〟でアーチ量産今季から打面が平たい形状の練習用バットでティー打撃に励むようになり、球を面で捉える意識でスイングの軌道やミート力に磨きをかけてきた。打ち方そのものを変えたことで、従来のバットでは感覚が合わなくなったという。
そこで手にしたのが〝岡本モデル〟だった。「ボールを巻き込んで強い当たりを打てるようにしました。これまではヘッドを走らせて打っていたけど、今はバット全体で打っている感じ」と感覚を明かす。
故障から戦列に戻ったのは6月初旬だった。徐々にギアを上げ、7月は10本、8月は6本、9月も8本と後半戦にかけてアーチを量産し、6年目で自己最多のシーズン30本塁打を放った。
進化を実感するのが、左投手の内角球への対応だ。左翼のファウルゾーンに切れていた打球が、スタンドインするようになった。「すごく新しい感覚。こんな打ち方ができるんだ」と手応えを深めた。
もちろん、道具を変えて成績が出るほど甘い世界ではない。離脱期間は患部のリハビリだけに費やさず、集中的に打ち込み、さらなる高みに到達するための態勢を整えた。「自分に合った打撃をみっちりできた。無駄な時間ではなかった」と実感を込める。
相川監督が「現状維持でシーズンをスタートしていない。進化しようと取り組んでいる結果」と評したように、牧は立ち止まることを選ばなかった。離脱を力に変え、新たな領域に踏み込んだ。(鈴木智紘)