岩下志麻が天国の夫・篠田監督に送る愛のメッセージ

[ 2026年8月28日 20:15 ]

岩下志麻が上梓した著書の書影
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 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】「読書の秋」が近づいてきたが、このところ村上春樹氏(71)の「夏帆 The Tale of KAHO」(新潮社)や、7月23日に68歳で亡くなった東野圭吾さんの新刊「永遠の記憶」(文芸春秋)などの話題作と向き合っている。

 女優の岩下志麻(85)が上梓した「同志として 妻として 『運命の人』篠田正浩と歩いた道」(7月27日発行、講談社)もそんな1冊だ。2025年3月25日に94年の生涯を閉じた夫の篠田正浩監督への断ち難き思いを「一緒に創った二二本の映画(本編から)」を軸に振り返った内容で、全編コレ、夫への愛に包まれている。

 「篠田が亡くなってから私は、後追い自殺することばかりを考えていました。死にたくて死にたくて。」という一文はショッキング。それくらい大きな喪失感に襲われた中での執筆に、2人の絆を記録しておきたいという岩下の覚悟がにじむ。

 「女優王国」(1960)から「最高の笑顔で」(2025)までの26項目。松竹と専属契約を交わし、木下恵介監督の「笛吹川」(60年)、渋谷実監督の「好人好日」(61年)、そして小津安二郎監督の「秋日和」(60年)と「秋刀魚の味」(62年)の話で幕を開け、篠田監督との出会いの場となった「乾いた湖」(60年)の面接、「暗殺」(64年)後の“逆プロポーズ”と結婚。そして独立プロ「表現社」の立ち上げ、ベネチア国際映画祭に出品されて世界をうならせた「心中天網島」(69年)秘話、「沈黙 SILENCE」(71年)、カンヌ国際映画祭コンペ部門に出品された「卑弥呼」(74年)…と続く秘話はどれもこれもが興味深いエピソード満載だ。

 「はなれ瞽女おりん」(77年)、「瀬戸内少年野球団」(84年)、ベルリン映画祭で銀熊賞に輝いた「鑓の権三」(86年)、「少年時代」(90年)、「写楽」(95年)、そしてラストメガホン作「スパイ・ゾルゲ」(03年)と展開してゆくが、篠田監督が映画界に残した功績の大きさを改めて思い知った。

 記者はまだ壁が隔てていた東西ドイツの両方でロケが行われ、89年に公開された「舞姫」の撮影現場にお邪魔し、カンヌ映画祭に出品された「写楽」では現地で取材に当たった。それだけに懐かしさが込み上げると同時に、「そういえばカンヌに岩下さんと葉月里緒奈が来られなかったなあ…」と今更ながら思い出して残念がる自分がいる。

 「同志」として共に映画作りに打ち込み、58年間を共にした運命の人とたどった道。それこそ映画にも出来そうな読み応え十分の夫婦の物語だ。

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