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【コラム】金子達仁

カップ戦好き国民の血が騒ぐ 6年ぶり天皇杯元旦決戦

[ 2026年10月29日 10:00 ]

アーセナルに勝利し喜ぶ、リーグ2(4部相当)フリートウッドの選手
Photo By AP

 27日、イングランドのカラバオ杯で大波乱が起きた。プレミアリーグで首位を争うアーセナルが、リーグ2(4部相当)で18位に低迷するフリートウッドにPK戦の末敗れたのである。

 アーセナルを愛するファンにとっては、何とも不思議な試合だったかもしれない。乗り込んだ敵地の名称は“ハイバリー”で、相手のユニホームは赤地に白袖のプーマ。まるで、一昔前の自分たちと戦っていると錯覚してしまいそうな状況だったからだ。

 もちろん、かつてアーセナルが本拠地としていたハイバリーと違い、自治体が所有するこちらのハイバリーの観客収容数は、たったの5327人でしかない。1908年に創設されたという相手のユニホームが赤地に白袖だったのは、“本家”のパクリではなく、地元船団の色に由来していた。ファンの愛称は“コッド・アーミー”もしくは“フィッシャーマン”。コッドとは魚のタラのことで、要は、小さな漁師町で愛されてきた“おらがチーム”である。

 ちなみに、フリートウッドの選手たちの平均年俸は約10万7000ポンド(約2130万円)。4部リーグでこの額かと驚かされるが、アーセナルはといえば約811万ポンド(約16億円)で、実に75倍もの格差がある。それでいながらのこの結果だから、英国のネット上は歓喜、激怒、嘲笑など様々な感情がぶつかりあうお祭り騒ぎとなった。

 日本の天皇杯でも、時折衝撃的な番狂わせは起きている。記憶に新しいのは、J1勢を5連破して頂点まで駆け上がった22年の甲府だろう。個人的には、当時北信越1部だった松本が浦和を破った09年や、筑波大が仙台を3―2で破った17年などが印象に残っている。余談になるが、この試合で先制点と決勝点を奪ったのは三笘だった。

 サッカーという競技の性質上、実力は必ずしも結果に直結しない部分がある。一発勝負のカップ戦ともなればなおさらで、盃(さかずき)を掲げたものが勝者であっても、必ずしも強者ではない場合が多々あった。

 では、真の強者はどこか。それを決めるために考え出されたのが、リーグ戦という方式である。実力は必ずしも結果に直結するものではないが、実力に勝るものが結果を出す可能性はより高い。分母、つまり試合数が多くなれば、弱者が勝ち残る可能性は小さくなる。

 かくして、全世界にカップ戦とリーグ戦の両方が存在する現在の形式が広がったわけだが、ほとんどの国で、その国最大のタイトルはリーグ戦であるとされている。権威も人気も、リーグ戦の方が圧倒的に上という国の方が一般的かもしれない。

 現在、イングランドではFA杯とカラバオ杯という2つのカップ戦が行われているが、実は、欧州5大リーグの中で国内に2つのカップ戦があるのはイングランドだけ、である。一時期、フランスも2本立てを狙ったのだが、過密日程に対する選手からの不満や、観客動員が伸びなかったこともあり、わずか26回で消滅してしまった。

 その点、日本の場合はかなりイングランドに近い。高校野球やサッカーで一発勝負のトーナメントに親しんでいるのも大きいのだろうが、我々が相当にカップ戦好きの国民であることは間違いない。実際、ドイツやフランス、イタリアにはない“2つ目のカップ戦”――ルヴァン杯が日本には存在し、イベントとして定着している。秋の決勝が恒例だった大会は、Jリーグのシーズン変更に伴い、今大会から年を挟んで開催されることとなった。

 うれしい変更が実施されたのは、日本最古の大会でもある天皇杯である。現在ベスト16が出そろったところだが、今大会の決勝は6年ぶりに元日に行われる。お正月の定番が、やっと返ってきてくれた気分である。

 何より楽しみなのは、今大会はJリーグが秋春制に移行して最初の大会だということ。リーグ終了後に準決勝、決勝が行われていた従来の日程では、クリスマスを母国で過ごしたい外国人選手にとって、“負けてもご褒美が待っている大会”だった。

 今年からは違う。それがどんな影響を及ぼすのか、興味はつきない。(金子達仁=スポーツライター)

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