【実録 竜戦士たちの10・8】(57)中日・高木監督のキャンプの評価に「点数はつけられん」”白紙採点”に込めた周囲へのメッセージ
2025年2月26日 23時38分
◇長期連載【第2章 それぞれの再出発】
いざ動き出せば、プロ野球の1年は駆け足で過ぎていく。1994年も3月2日に巨人が宮崎での1軍キャンプを打ち上げ、翌3日に中日も沖縄・石川でのキャンプを打ち上げた。
しかし、一本締めの音頭をとる巨人の選手会長・吉村禎章を取り巻く選手の輪に落合博満の姿はなかった。実は、落合の母・ユキが2月28日深夜、脳出血のため秋田市内の病院で死去。1日の練習後、宮崎を離れ、秋田に向かっていたのだ。
キャンプの点数を聞かれた長嶋茂雄監督は「60点」とやや辛めの採点。「鍛えるべき若手を鍛えられなかったのが反省材料。若手の台頭を期待していたのに、むしろベテランの方が元気なぐらいだからね」。マイナス部分は、背筋痛でいまだ1軍に合流できない松井秀喜、頸部筋挫傷で別メニュー調整中の元木大介を指しているのは明らかだった。
中日は選手会長の川又米利が選手、関係者の輪の中で三本締め。長嶋と同様に、報道陣から採点をせがまれた高木守道監督は「点数はつけられんね。でも、楽しみということでは、去年より今年の方が上」と答えた。
「選手会長の川又、キャプテンの仁村徹を中心に、選手たちでやっていこうという姿勢は練習中も、練習以外でも感じられた。選手同士が話しているのを聞いても、そういうものが見えている」
選手の精神面での成長、意識の変化に目を細めた高木だが、「ただ」と言葉に力を込めると、さらにこう続けた。
「それがグラウンドの中で、どう形になるかはまた別のもの。勝負の中で、それが出ないと意味がない。成果というのは結果。オープン戦を見ても分かるように、練習と実戦は違う。原点はプロのプレーを見せるということ。グラウンドで目いっぱいやる。その意識と動きが大切なんだ」
キャンプが終われば、新たに実践編がスタートする。終わったことを後悔していても始まらないし、浮かれている暇もない。「60点」が長嶋の危機感の表れなら、高木の”白紙採点”は「結果を見てくれ」という周囲に向けた”メッセージ”でもあったのだろう。 =敬称略
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