【実録 竜戦士たちの10・8】(86)郭源治、「頭部死球一発退場」第1号に 彦野利勝のサヨナラ打で北野勝則がプロ初勝利
2025年5月12日 22時23分
死球を巡り3人の退場者を出した1994年5月11日のヤクルト―巨人戦(神宮)での大乱闘についてはこの連載でも書いたが、その“副産物”として施行された暫定ルールが5月20日の中日―阪神戦(ナゴヤ)で思いがけぬドラマを生むことになった。
2―0と中日リードで迎えた7回表1死二塁。「まず、体を起こしてから」と投じた郭源治の88球目、すっぽ抜けたシュートがディアーの側頭部を直撃すると、球審の上本孝一は迷うことなく、「退場」を宣告した。実は、同13日に開かれたセ・リーグ理事会で「頭部への死球は故意、過失に関係なく一発退場」の取り決めがなされており、郭がルール適用の第1号となってしまったのだ。
「まさか、あそこでぶつける投手はいないでしょ。気持ちも入っていてそれがあのボールになった。こっちの方がよっぽど痛いんだから」
ぶぜんとした表情で降板した郭源治だが、ブルペンも当然、準備不足。急きょリリーフした落合英二、小島弘務がつかまり3失点。たちまち、逆転を許してしまった。
それでも、大豊泰昭の二塁打で追いついた中日は9回裏に1死満塁のサヨナラ機を迎えた。ここでフルカウントからの6球目、阪神・久保康生のスライダーをひっかけた彦野利勝の打球は前進守備を敷いた遊撃の左をゴロで抜けていった。
サヨナラ打は、彦野にとって91年6月18日の大洋戦(ナゴヤ)の延長10回、盛田幸妃から本塁打を放って以来。その3年前は一塁ベースを回ったところで右ひざの靱帯(じんたい)を断裂。苦痛に顔をゆがめて倒れ込みそのまま病院に直行している。この日は「捕られるかと思った」と全力で一塁に駆け込むと、次々とナインがヒーローに駆け寄り手荒い祝福。心地よい痛みに彦野の顔にも会心の笑みが浮かんだ。
そして、もう一人。ベンチ前でナインの握手攻めにあっていたのが北野勝則だった。同点の8回にマウンドに上がってピンチを背負いながらも2イニングをゼロに抑えると、うれしいプロ初勝利が転がり込んできた。
「これまでお世話になった人の顔が次から次へと浮かんできて…」。言葉を詰まらせながらも「長かったです」と続けた北野。三重・海星高から大洋に入団し、トレードを経て9年目。長身の本格派左腕が横手投げの技巧派に変身し、努力でつかんだプロ1勝だった。=敬称略
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