表彰式後撮影に応じる、2位のアレクサンドラ・イグナトワ、優勝した島田麻央、3位のアンナ・フロロワ=田中貴金属アイスアリーナ 会場にこれまでとは少し違う空気感があった。9月6日まで東京で開催されたフィギュアスケートのチャレンジャー・シリーズ(CS)「木下グループ杯」。今季から個人の中立選手(AIN)として国際大会に復帰したロシア勢が、強い存在感を放っていた。
2023年に入社した記者にとって、今年2月のミラノ・コルティナ五輪を除いて、22年の北京五輪を最後に国際舞台から遠ざかっていたロシアの選手が本格的に出場する試合の取材は初めて。東京の会場まで駆け付けたロシアメディアの記者が、公式練習から歓声を上げながら自国のスケーターに大きな拍手を送る姿は新鮮で、これまで以上に緊張感が漂っていた。
女子は22年北京五輪で銀メダルを獲得したアレクサンドラ・イグナトワ(旧姓トルソワ)が結婚と出産を経て出場。男子選手でも跳ぶのが難しい大技4回転ルッツを成功させた直後に、1歳の長男を抱っこしながら取材に応じる姿は、報道陣にとっても衝撃的だった。
ロシア勢の復帰によって〝4回転時代〟の再来となるか─。それでも日本女子の新鋭たちに悲壮感はなく、逆に目を輝かせているのが心強かった。今季からシニアに上がり、フリーで4回転トーループを決めて優勝した島田麻央は、公式練習で初めて女子選手の4回転ルッツを目撃し「ジャンプの高さや力強さが違う。いい刺激をもらいました」と笑顔で話した。自身も中高生の頃から4回転ルッツの練習を継続中。まだ回転が半回転ほど足りず、成功したことはないというが「見ていたらできそうだなという気持ちになってきた。帰って練習したい」。イグナトワのジャンプに触発され、成長意欲を搔きたてられているようだった。
ミラノ・コルティナ五輪銅メダルの中井亜美は、「トルソワ選手が大好き。テレビで4回転ジャンプをバンバン跳んでいる姿を見てかっこいいと思っていた。一緒に試合に出られてうれしい」と、試合前から興奮気味に語っていた。「ロシアの選手は4回転を軽々と跳ぶ。見て学びたい」。かねて4回転ジャンプ習得の意欲を示している18歳にとっても、少なからず刺激になったはずだ。
ロシア勢の復帰によって、新たな時代に突入することが見込まれるフィギュア界。日本の頼もしいホープたちの成長に、注目していきたい。(鈴木和希)