日本ハム・伊藤大海投手(29)と西武・黒田哲史内野守備走塁コーチ(51)が9月12日の試合中ににらみ合い、両軍一触即発となった。伊藤投手が三塁コーチの黒田コーチにサイン伝達の疑いを持ったことで口論となり、両ナインが飛び出してマウンド付近は騒然。約5分間の中断で場内は緊張感に包まれた。その後、試合は再開され、延長十二回引き分けに終わった。
私はこの一件について、実際に何があったのか、どちらに非があるのかといった判断材料を持ち合わせていない。ただ、パ・リーグの2位西武と3位日本ハムの戦いに激しいライバル心を見た。乱闘を容認するわけではないので誤解のないようにしてほしいが、こうした緊迫感は嫌いではない。
試合前から両軍が集中し、張り詰めた雰囲気が漂う勝負こそ、プロとして本来あるべき姿だと思う。一つのボールを投げて打つ野球という競技において、白球に集中する緊迫感にファンは引き込まれ、応援の熱量も高まる。真剣勝負の迫力に勝る面白さはない。
一方、セ・リーグでもシーズンを通して好調だった阪神の強力打線が不振に陥り、巨人と激しい首位争いを繰り広げている。いかに優れた打線でも低調期に入ることはあるが、阪神もここまで来て優勝を譲るわけにはいかない。巨人も「伝統の一戦」と称される宿命の対決で負けるわけにはいかず、終盤戦の優勝争いは大きな緊張感を漂わせている。
緊張感が高まった試合では凡プレーが減り、おのずと試合の質は高くなる。単純な走塁ミスやアウトカウントの間違いなどは興ざめだ。大事な局面での一つのミスが命取りになるからこそ、チームの目は厳しくなり、選手自身もそれを強く恥じる。
張り詰めた空気が漂えば、選手も準備を怠らない。プロの真剣勝負だからこそ生まれる緊張感こそが、ファンを魅了するのだと思う。(サンケイスポーツ専属評論家)