【内田雅也の追球】「すごみ」伝わる走塁

[ 2026年2月7日 08:00 ]

ゲームノックで滑り込んで生還し、ナインとハイタッチする阪神・森下(左)(撮影・椎名 航)
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 いつもの、どこかのんびりした音色が流れていた。阪神キャンプ地、沖縄・宜野座村に正午を知らせるチャイムが鳴り響いた直後だった。

 第2クール初日、今キャンプ初のゲームノックが行われていた。1死二塁想定で、二塁走者は森下翔太だった。

 ノッカーの外野守備兼走塁チーフコーチ・筒井壮は左前にゴロの安打を打った。左翼手が打球を拾い上げた時、森下はまだ三塁に到達していなかった。2歩も手前だった。それでも三塁コーチボックスに立つ内野守備走塁コーチ・田中秀太は「回れ」と手を回した。

 森下の走塁のすごみはこの後である。三塁を蹴った直後から、ファウル地域にほとんどはみ出さずに回ったのだ。三本間のライン上を駆け、本塁に足から滑り込んだ。間一髪セーフだった。
 スタンドの観衆から自然と拍手がわき上がった。ファンにもすごみは伝わっていたわけだ。森下自身も両手を掲げ、本塁近くの選手たちに雄たけびをあげていた。選手からも声があがった。それほど見事な走塁だった。

 「あれですよ」と田中秀太は言った。「あの走塁をいま、練習しているんです」。三塁を蹴った後の膨らみをいかに小さくできるか。それは3日に臨時コーチで訪れたOBの赤星憲広(本紙評論家)の教えでもあった。

 「今日の森下は見事でした。実戦でいかにできるかが問題ですが、今日は実戦形式の練習でできました。あれでいいんです。できる選手もできない選手もいます。でも彼は以前から実に積極的に取り組んでくれていますからね」

 この日の走塁は実に激しく、本塁の接触プレーで故障を心配したほどである。実は準備が遅れ、手もとのストップウオッチで計測するのを逃していた。ただ、他の選手が同様の二塁から本塁突入で途中で抜いて走って、7秒台後半だったのに対し、恐らく6秒台序盤のタイムだったはずだ。

 今キャンプ、森下の練習に取り組む姿勢は確かに際立っている。キャンプイン初日のシートノックでの激しい送球でも明らかだった。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表という自覚と誇りと責任感も伝わってくる。

 もともと目立つ場面で力を発揮する「ホットドッグ」な選手だ。打撃や守備はもちろん、走塁にも意欲的な姿勢は気持ちがいい。 =敬称略= (編集委員)

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