【ライブレポート】タイトル未定 六本木の熱狂すら呑み込んだ「圧倒的静寂」の正体――客席6人の日から新衣装で紡いだ90分間と、決戦のカナモトホールへの誓い

[ 2026年7月10日 19:00 ]

【画像・写真1枚目】タイトル未定 六本木の熱狂すら呑み込んだ「圧倒的静寂」の正体――客席6人の日から新衣装で紡いだ90分間と、決戦のカナモトホールへの誓い
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 北海道を拠点に活動する5人組アイドルグループ「タイトル未定」が6日、東京・EXシアター六本木で全国ホールツアー2026「KAKAR」の東京公演に臨んだ。冨樫優花、阿部葉菜、谷乃愛、多田萌加、山下彩耶の5人が、サプライズで新衣装をまとい届けた90分間。六本木の夜を揺らした熱狂、その熱すら呑み込んだ静寂、そして8月31日に地元北海道でのツアーファイナル、カナモトホールへの誓いに迫る。(「推し面」取材班)

 照明が落ちた瞬間、会場の空気が変貌した。歓声の余韻が、すっと奥へ引いていく。ステージに立つ5人の新衣装が光を受けた。

 白と水色のワンピースタイプ。肩や胸元に揺れる赤リボンの結び目は、水引きの「叶結び(かのうむすび)」。結び目が表から見れば「口」、裏から見れば「十」。二つを合わせると「叶」の文字になる。5人の挑戦や夢が叶うようにと、製作者が願いを込めて手編みしたリボンをまとい、大舞台に立っていた。

 まぶしい光の表側と、そこにたどり着くまでの影。4年ぶり3度目の全国ツアー。その4カ所目となった東京公演は、その両方を真正面から見せるものだった。

 ツアータイトル「KAKAR(カカラ)」は、アイヌ語で「紡ぐ」の意味。過去、現在、未来。単独公演で客席に6人しかいなかった初期も、北海道から全国へ足を運び続けた日々も、そしてワンマンを控えるカナモトホールの景色も、そのすべてを一本の糸にしていく。全18曲、約90分。そこには、ただ楽曲を並べただけではない、一本の太い物語があった。

 中盤、新曲「生きてれば」のイントロが鳴る。フロアの空気が熱を帯びた。肩を組み、右拳を突き上げるロックチューン。「頑張って」「大丈夫」をサビで連呼するが、そこにあるのは「もっと頑張れ」と追い立てる強さではない。「頑張らないで」と隣で寄り添うような優しさだ。

 仕事に追われ、数字に追われながら、平日の月曜日に現場へ駆けつけてくれた大勢の人たちがいる。5人の歌は、その胸の奥に確かに届いていた。客席は拳を高く上げて、その想いに応えた。

 そこから「最適解」へ。ステージは一気に光を増した。曲振りで多田が客席に呼びかけた。

 「夢を目指して頑張る人がいたら、絶対にあきらめないでください。私たちも北海道の顔になるという夢を絶対にあきらめません」

 六本木の空気が熱を持った。大きすぎる夢だ。簡単に届くステージではない。それでも、その言葉は浮ついていなかった。歌声の奥に、ここまでの時間が詰まっていた。

 だが、タイトル未定はそこで終わらない。希望の光を自ら引き裂くように、直後に「薄明光線」を叩き込んだ。コロナ禍に発表された初期の代表曲だ。

 空気が沈む。照明が深く落ちる。深い底をのぞき込むような視線。曲中、歌い終えた冨樫が膝をついて倒れ込むような振り付け。そして、掌を床に激しく打ち付ける。また立ち上がる。ラストのサビで全員の声がそろう。

 ♪「これでいいのか」問いかけながら 「これでいいんだ」とまた押し殺す そうやって毎日生きてきた 傷つくことが怖かったんだ――

 さっきまで掲げていた夢の輪郭が、今度は重圧となってステージ上にのしかかる。光が強ければ強いほど、足元の闇も濃くなる。5人はそれを歌に乗せた。そして、過去の自分自身と向き合い、答えが見つからなくても希望を見出すクライマックスへと観客を導いた。

 ここで生まれたのが、圧倒的静寂だった。

 会場は決して冷えていない。むしろ熱狂していた。客席の温度は高かった。それでも、歌が終わった一瞬、六本木から音が消えた。喝采をためらわせる時間。

 観客が盛り上がることを忘れたのではない。ステージにいる5人に目を奪われていた。この沈黙こそ、タイトル未定の強さだった。

 観客がわずか6人だった日がある。コロナ禍で思うように自分を表現できない時間が続いた。それでも歌い、踊り、遠征を重ね、一人ずつ出会いを増やしてきた。

 阿部は言う。「皆さんに見つけてもらった」と。やがて、地元に帰ってくると「北海道にいたんだ、タイトル未定って」と存在が知られるようになった。

 華やかな新衣装の奥に、その泥くさい歩みが透けて見える。だから「薄明光線」の影は軽くならない。客席は静まる。それは空白ではない。積み上げてきた時間が、音よりも大きく感情に乗って届いた瞬間だった。

 「見つけてくれたみんなのおかげで、やっとこうやって大きな会場でできるようになりました」

 この日最後のMCで阿部が続ける。8月31日、ツアーファイナルの地・カナモトホール。札幌から歩き出した5人が、もう一度、地元に答えを持ち帰る決戦の舞台だ。

 「8月31日にちょっとでも迷ってたら、北海道に来てほしいなと思います。タイトル未定の地元に来て下さい。私たちが待ってます。また、北海道で会えることを楽しみにしています」

 まっすぐな言葉が、会場にまっすぐ落ちた。

 大きく見せようとする飾りはない。ただ、本気だけがあった。客席の熱が、もう一度ステージへ向かっていく。六本木の夜に、カナモトホールへの誓いが刻まれた。

 終盤、「空」。谷が全身で放つロングトーンが、会場に残った重たい空気を切り裂いた。どこまでも伸びていく声。見上げる5人。ステージ上の全員が右斜め上を仰ぎ見たフィニッシュは美しかった。

 続く「灯火」では山下がラップを披露。ラストは「水流」。アンコールなし。本編18曲を一気に駆け抜けた90分間。ここまで紡いできた光、影、熱狂、静寂、客席6人の日、新衣装の赤い叶結び。そのすべてが一本の流れとなり、ステージから客席へ広がっていった。

 曲と曲、光と影、熱狂と静寂で勝負する。その姿勢に、北海道のアイドルシーンをけん引するタイトル未定の力量が表れていた。

 過去の痛みも、小さな喜びも、すべてを一本の強靭な糸に変えて――。5人が編み込んだ「叶結び」は決してほどけない。その物語は8月の終わり、北の大地でさらに強く結ばれる。

【セットリスト】
2026年7月6日(月)
東京・EX THEATER ROPPONGI
タイトル未定 Hall Tour 2026「KAKAR」東京公演
1.青春群像
2.翼
3.プラネタリウム
4.栞
5.夏のオレンジ
6.蜃気楼
7.壊せ
8.黎明
9.群青
10.生きてれば
11.最適解
12.薄明光線
13.鼓動
14.泡沫
15.道標
16.空
17.灯火
18.水流

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