ラウンド中の笑顔が印象的だった。5月31日まで行われた女子ゴルフの「リゾートトラストレディス」。2度の大けがを乗り越えたツアー通算1勝の植竹希望は、第3ラウンドまで8位と上位争いに加わった。最終日は75とスコアを落として25位に後退したが、「(状態は)まだ2割くらい」という中で復活の兆しを示した。
度重なる試練に見舞われてきた。2024年に「右股関節唇損傷」の診断を受け、1度目の手術を経験。術後は医師から「3カ月の間、歩行距離は1日1キロ以内にしてください」と告げられ、「暇で仕方なかった」。1キロは歩いて10~15分程度の距離で、散歩すらままならない。加えて体重が増えると股関節の回復が遅くなるため、食事にも制限がかかり、肉はほとんど食べず野菜と玄米が中心の日々に。「寝てばかり。鬱になりそうだった」。メーカーにマット、母にパターを送ってもらい、病室で球を転がす時間が数少ない気分転換だった。
懸命なリハビリを経て同年中に復帰。しかし、今度は25年1月のオフにラダーを使用したトレーニングで転倒し、手をついた際に右手首を骨折した。2度目の手術を余儀なくされ、親指の付け根あたりに3センチほどのボルトを入れた。以降の半年間は、1日に最大50球ほどしか打つことができず。もどかしい時間を経て昨年のQTで13位に食い込み、今季の戦いに臨んでいる。
「二度と手術はしたくない」というのが、心からの本音だ。ただ、受難を経験して心境の変化もあった。「もうちょっと人生を楽しもう、みたいな」。きっかけは、股関節の手術後のリハビリ期間に知り合ったボートレーサーの新田雄史さんから「人生、楽しまないともったいなくない?」と声を掛けられたこと。「水上の格闘技」と呼ばれるボートレースの世界で、命がけで戦う先人からの言葉は胸に刺さった。ゴルフ一筋で「子供の頃からあまり遊んだことがなかった」というが、それからは友人と遊んだり、旅行の計画を立てたりするように。ゴルフ以外に見いだした人生の豊かさは自然と視野を広げ、次第と心の余裕につながっていく。試合中の笑顔も「前より増えましたね」と自覚しており、取材中には繰り返し「楽しみたい」と明るい表情で話していた。
「もう一度、ルーキーとして始めたような感じです。楽しくやろうと思っています」。少し遠回りしながら、確かな成長を遂げた〝黄金世代〟の実力者。その復活の軌跡は、多くの人にとって希望となるはずだ。(鈴木和希)