「私には逃げ道なんて初めからなかった」――ピュアリーモンスター・白城もえの 限界のステージでアクセルを踏み込む理由

[ 2026年6月9日 20:30 ]

【画像・写真3枚目】「綺麗な声より心を」――ピュアリーモンスター白城もえの 「晴れの国」から来た〝嵐を呼ぶアイドル〟の生きた証明(撮影・菅原もも)
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 声優アイドルユニット​「ピュアリーモンスター」の白城もえの。ソロインタビューの最終回となる第3部では、華やかなステージの裏側にある挫折、張り裂けそうな不安を救った言葉、そして声優アイドルとして世界の中心へ這い上がろうとする野心の原点に迫る。(「推し面」取材班)

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 幼い頃の記憶を辿るように、白城の視線が天井の照明へと泳いだ。

 「晴れの国」と称される岡山県で育ちながら、なぜか雨ばかりを引き寄せてしまう不思議な巡り合わせ。けれど、少女の頭の中にはいつも、天候すら塗り替える色鮮やかな空想の世界が広がっていた。

 ​「ちっちゃい頃から、やっぱり何者かになりたくて。幼稚園の頃とか『ウサギになりたい』とか言ってましたし。生のニンジンをいっぱいつまみ食いしてたら、お母さんに『あんたウサギになるよ』って言われて、『じゃあウサギになろう』とか(笑)。アニメも大好きだったので、セーラームーンになりたい、海賊になりたい、忍者になりたいって言ってて」

​ あどけない夢の数々は、やがてひとつの明確な道へと収束していく。

 「全部なれるのって声優だ!って。生身の人間って猫にはなれないですよね。でも、声優になって猫にもなれましたし、やっぱり『何にでもなることができる声優』が良かったなって」

 ​何にでもなれる魔法の切符を手に入れ、飛び込んだ表現の世界。しかし、そこは憧れだけでは生き残れない、息をすることすら許されないほどの冷徹な現実が待つ場所だった。

​ 初めてアフレコのマイク前に立った、ロシア映画「魔界探偵ゴーゴリ」の日本語吹き替えの日。喉の奥がカラカラに乾き、心臓の鼓動だけが鼓膜を打った記憶は、今も鮮明に焼き付いている。

 ​「懐かしい……いや、もう本当に緊張でどうにかなりそうでした。素晴らしい方が出演されていて、一番最初でこんなすごい方とご一緒するのかってなって、もう息が本当にできなかったです。誰もが知ってるような方々だったので、息をするのも必死でした」

​ 事務所を経て、必死に喰らいつき、運命に導かれるようにして「ピュアリーモンスター」への加入を果たした。声優とアイドルの両立。

 その華やかな日々の裏側で、心が折れそうになるほど大きな壁が立ちはだかったのは、約3年前のことだ。演技の世界への挑戦だった。初めての舞台。その稽古初日、スタジオの床に縫い付けられたかのように、一歩も動けなくなったあの瞬間。

 ​「ありました。もう本当に辞めようって思いました。活動を」

​ 一瞬、唇が固く結ばれる。

​ 「初舞台の稽古初日なんですけど。周りの方々は経験者だらけで、私は初めて会う人たちと、さらに舞台なんかやったことなかったんです。聞いてた話と違うというか、みんな初日から台本なんか持ってないんです。私だけ台本持ってて、『うわ、やばい』と思って。もう何もできなかったし、『私なんでここにいるんだろう』ってなって、帰って大泣きしました。『私もう絶対やらない方がいい』とか言って泣いてたんですけど……」

 ​逃げ出したかった。すべてを投げ出して、楽な場所へ帰りたかった。

 だが、涙で視界がゆがむ暗闇の中で、不屈の牙が剥き出しになる。

 ​「でも、辞める選択肢なんて端からなかったんです、私には…。そもそも逃げ道なんて作っていなかったから。意地でもセリフを覚えて、次の日には絶対にやることにしました。そりゃあ、しんどかったです。けど、ちょっとずつできるようになった。だから私は逃げ道を作らない。だって仕事なんだし、やらなきゃいけないことはやらなきゃいけないことなので。どんだけ苦しくてもしんどくても、やるしかない。だから、私はやるんです」

​ しんどくても、やる。

 その覚悟は、現在のアイドルのステージにおける圧倒的なギアの上げ方へと直結している。息が切れ、足がもつれそうになる後半、客席の笑顔が見えた瞬間に、限界の向こう側へとさらにアクセルを踏み込むのだ。

 しかし、激動する環境のなかで、時にグループ全体が深い霧に包まれることもあった。

 2年の空白を経てリリースされた「しゅがぴゅあ」の振り入れの日。「私たち、本当に大丈夫なのだろうか」。誰も口には出さないものの、心の奥底に沈んでいた不安。

​ それを一瞬で吹き飛ばしたのは、前作に引き続き担当してくれた振付師の、ぶっきらぼうで温かい一言だった。

​ 「振り入れをしていただいた日に、『ピュアモンいいじゃん!頑張んなよ!』って言ってくださって。メンバーみんな号泣しちゃいました。ファンの方々に『こんだけ大変なんだよ』っていうのはお見せできないじゃないですか。でも、そうやって一瞬で私たちの現状を理解してくれて、そうやって声をかけていただけた。すごい嬉しくて……」

​ 声を詰まらせる。語られない数秒の沈黙に、人知れず抱えていた苦悩と救いがあったのかが伝わってくる。

 ​「なんかなんだろう、全部報われたみたいな気持ちになって。そういう時の気持ちはずっと忘れないでいたいなって思います」

​ 目指すのは来年5月に迎える結成10周年の節目、そしてその先にある巨大な景色への渇望だけが、爛々と輝いている。

 ​グループとして初のアニメタイアップとなった楽曲「しゅがぴゅあ」(アニメ「ネコのクラちゃん」)。いずれはアニメタイアップ曲を引っ提げて「アニメロサマーライブ(アニサマ)」の本編ステージに立つことが夢だ。

 そして、声優としての、絶対に譲れない誓いがある。

​ 「私、アニメに出演したことは一度もないのでそれも目標ですね。もしタイアップができるなら、その作品にも出演できたらもう万々歳ですね。エンドロールに、自分の名前を載せたい」

 ​幼い頃、何にでもなれると信じてウサギやセーラームーンを夢見た少女。​いまは退路を断ってマイクを握る。その生き様は、同じように日々を戦う私たちの心を力強く支えてくれる。

​ いつか、エンドロールに「白城もえの」の名が刻まれるその日まで。これからも、自分を推してくれるみんなと熱い旅路を歩んでいく。

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