国立療養所長島愛生園の万霊山納骨堂に供花した左から瀬川瑛子、杉良太郎、伍代夏子=岡山・瀬戸内市 厚労省特別健康対策監の歌手で俳優、杉良太郎(82)が20日、岡山・瀬戸内市の国立療養所長島愛生園で慰問公演を開催した。不治の病と誤解されたハンセン病患者を隔離するらい予防法が1996年に廃止されてから30年の今年、国立ハンセン病療養所全13カ所を訪問予定で、同園は10カ所目。妻で歌手の伍代夏子(64)、瀬川瑛子(78)も出演し、過去に差別を受けた入所者らと笑顔で交流した。
名産のカキ養殖用のいかだが浮かぶ穏やかな瀬戸内海を望む長島愛生園に、杉が力強い歌声で癒しと活力を届けた。
入所者は60~70人で平均年齢は89歳。人気主演時代劇で1970年代後半に放送された「遠山の金さん」をリアルタイムで知る世代が多く、会場は「杉様、ようこそ!」「待ってました!」などの声援で盛り上がった。
杉は「皆さんに少しでも楽しんでもらえたら」とにこやかにあいさつ。リリースから50年にわたり愛される同作の主題歌「すきま風」や「明日の詩」を熱唱した。
ハンセン病は顔など皮膚に残る後遺症から差別の対象となった。杉は89年、訪問先のベトナムで路上に倒れた患者と遭遇。感染力は弱いが、誰も助けない差別を目の当たりにした経緯がある。
96年には熊本の国立療養所、菊池恵楓園で慰問舞台「遠山の金さん」を上演。当時の思い出として「『頑張れ』の声援と真実の拍手を教えてくれた」と感謝した。
長島愛生園は30(昭和5)年、国立療養所の第1号として瀬戸内海に浮かぶ長島に開園。断種を前提とした所内結婚や監房への収監など差別の歴史も刻んできた。
40年代に治療法が確立するも、根強い偏見などで全国の隔離政策は継続。杉は「人は苦しくともなぜ生きる…私も82歳でこの言葉が頭をぐるぐる回る」と入所者に寄り添うように告白した。
デビュー前の15歳当時、地元の神戸市で通っていた歌謡学校で刑務所を慰問して以降、67年にわたり慰問を継続。災害支援活動なども展開し、国立療養所全13カ所への訪問もあと3カ所だが、「全部回ってもまた1から回ると思う。死ぬまで命のある限り、ずっと続けていく」と力説。福祉活動の熱意に入所者は大きな拍手で応え、杉と人生の活力を共有していた。(山内倫貴)
★園内の万霊山納骨堂に供花
杉は公演前、92歳男性の入所者と面会。デビュー前、地元の神戸で通っていた歌謡学校の恩師が歌唱指導で同園を訪れていたと聞き、「縁があると感じてびっくりした」と明かした。公演で伍代はNHK紅白歌合戦などで披露したヒット曲「忍ぶ雨」や「人生にありがとう」、来年デビュー60周年の瀬川は「命くれない」などを熱唱した。杉を含めた3人は公演後、園内の万霊山納骨堂に供花した。