【内田雅也の追球】ミスを糧にしたプロ魂

[ 2026年9月27日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神8─3DeNA ( 2026年9月26日    横浜 )

7回、2打席連続で犠打を決める元山
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 プロゴルファー坂田信弘原作のゴルフ漫画『風の大地』(小学館)で主人公の若手に師匠の小針春芳(実在のプロゴルファー)が「昨日のことは忘れなさい」とアドバイスするシーンがある。

 「昨日は終わりました。ミスの原因を見つけたら、すぐにそのミスを忘れなさい。ミスを忘れることもプロの技量のひとつです。そしてミスの原因だけを記憶するのです。その記憶の積み重ねがプロの財産となります」

 何とも含蓄のある考え方である。ゴルフの試合は連日ある。ミスを引きずっていてはスコアが伸びない。毎日試合があるプロ野球に通じる。

 阪神は前夜、拙攻を繰り返し、手痛い逆転負けを喫していた。ナイターから一夜明けたデーゲームで、失敗を糧にする攻撃が見られた。

 佐藤輝明は1回表1死一、三塁、追い込まれながら中堅に犠飛をあげた。前夜は同じ1回表1死一、三塁で初球を三邪飛に凡退し無得点に終わっていた。

 元山飛優は6回表無死一、二塁で初球を一塁線に送りバントを決めた。続く坂本誠志郎の2点二塁打を呼んだ。前夜は1点を追う9回表、同じ無死一、二塁で送りバントを3本ファウルし、三振に倒れていた。

 さらに、すでに5点リードしていた7回表にも同じ無死一、二塁で打席が回り、一塁前に犠打を決めた。前夜の悪夢を打ち消すような連続成功となった。

 翌日は新しい一日である。佐藤輝も元山も前夜のミスをうまく忘れ、原因を分析、消化して臨んでいたのだろう。プロの精神力や姿勢が見える。

 もう一つ、元山で言えば、この日、痛恨の失策があった。3―1の4回裏2死二、三塁で遊ゴロを後逸、走者2人が還り同点を許した。さすがに消沈したような表情が中継画面に映っていた。

 漫画『MAJOR』で主人公の吾郎が海堂学園高時代、ミスした同級生に「もっと楽しくやれよ、国分」と言葉をかける。「誰かがミスしてもみんなで助け合えば帳消しにできるんだよ。野球ってやつは」。団体競技の本質が伝わるセリフだ。

 6回表の4点に涙を浮かべる元山が再び画面に映った。「僕の中ではほんと救われた。もう大感謝です。うれしいというか、ほっとしたような。ありがとうって……」

 ミスを乗り越え、また一歩、栄冠に近づいたのだった。 =敬称略= (編集委員)

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