【実録 竜戦士たちの10・8】(90)「何で全力で走らん」種田の”心の緩み”に落とした高木監督の公開カミナリ
2025年5月21日 23時05分
首位を走る巨人と、1・5ゲーム差でピタリと追走する2位・中日の差が1週間、7試合ぶりに開いたのは1994年5月29日だった。
「松井が打つとチームに勢いがつく」。長嶋茂雄監督の言葉通り、松井秀喜の決勝弾で28日の広島戦(広島)に勝った巨人は、翌日の第3戦も4回にノーヒットで先制すると5回には相手バッテリーミスで追加点を挙げ、5カードぶりの勝ち越し。長嶋が「確かにツイてましたね」とほくそ笑んだこの日、浜松では中日・高木守道監督の怒声が響いていた。
こちらは横浜の小桧山雅仁以下4投手の前に零敗し、5カードぶりの負け越し。二ゴロに倒れ、最後の打者となった種田仁がベンチに引き上げてくるところに、高木のカミナリが落ちた。
「タネ(種田)、何をやっとるんだ。何で全力で走らん。何のためにお前を使っとるのか分かっとるのか!」。番記者たちが取り囲んでいるのもお構いなし。あまりの剣幕に、種田も直立不動で「すみません」と頭を下げるしかなかった。
何も“全力疾走していればセーフになった”と言っているわけではない。「調子が悪くて、気分的にも落ち込んでいるのだろうが、アイツらが自分のやることをしっかりやる。いかにハッスルしていくか。目の前の勝ち負け以上に、そういうことの方が大事なんだ。タネあたりは一番やらないかん選手。それがゴロを打って、トロトロ走っていたんじゃ話にならん」とまくしたてた。
パウエル、ジェームズの両外国人をケガで欠き、仁村徹、彦野利勝らベテラン勢も体のあちこちに痛みや不安を抱えながら出場を続けている。
ペナントレースも40試合を消化し、疲れも出る最初の勝負どころ。そんな中、技術より気持ちでチームを、そして自分自身を引っ張っていかなければならない若いリーダー候補の“心の緩み”が、高木には見逃せなかったのだろう。
ともに4月は好スタートを切りながら、一転「我慢の月」となった5月。この29日の勝ち負けで巨人は12勝10敗で4月に続き月間勝ち越しが決定。中日は11勝11敗の5割に。今季3度目となる31日からの直接対決(東京ドーム)では、そんな“勢い”の恐ろしさを、まざまざと見せつけられることになる。=敬称略
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