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「日本の習慣だもんで覚えてください」 多国籍の愛知県西尾市「県営緑町住宅」手探りの共生

2026年4月14日 05時10分 (9月9日 16時51分更新)
 古い街並みが残り「三河の小京都」と呼ばれる愛知県西尾市。外国人政策が争点の一つとなった衆院選期間中の2月1日、プラスチック成形・加工工場が立つ一角にある「県営緑町住宅」の集会室に、60人ほどの住民が集まった。

自治会費・共益費の徴収について説明する愛知県営緑町住宅の自治会役員ら=2月、愛知県西尾市で

【連載】ホーミー 第1部・外国人団地
 深刻な人手不足にあえぐ日本で、今や外国人労働者は欠かせない存在となった。ただ、言葉や習慣の違いから地域との摩擦が絶えず、社会の変貌を懸念する声は根強い。改正入管難民法が施行された1990年以降、「デカセギ」で来日し、地域の担い手になりつつある日系ブラジル人を中心に、軋轢(あつれき)を乗り越えながら共生を目指すホーミー(米国のスラングで仲間たちの意)の姿を描く。 =文中敬称略。 (西山輝一、藤川大樹)
 
(1)「日本の習慣だもんで覚えてください」 多国籍の愛知県西尾市「県営緑町住宅」手探りの共生(この記事)
(2)顔かたちは日本人と変わらないけど…、一番の問題は言葉 急増した「デカセギ」日系人
(3)「何でも一つの袋に入れる」外国人のごみ分別問題、90年代に自治会長務めた男性は市役所に啖呵を切った
(4)「マジで私か…」ブラジル生まれの日系2世が自治会長に 役員18人中15人が外国にルーツ
(5)多国籍の住民、イベントで顔なじみに 各世帯に配られた米1袋、ちょっとしたもめ事に
(6)「不公平」「仕方ない」、自治会費などの滞納巡って「米騒動」 県への徴収移行の可否は結論出ず
(7)【動画】自治会長、就任1年を前に「辞任宣言」⁉ 多言語飛び交う県営住宅、誰も後任に手を挙げず…
(8)少年時代「豚汁人」と呼ばれた自治会長はドラゴンボールと幽遊白書で日本語を覚えた 外国人住民が大半の団地
(9)昨年10月で途絶えた苦情 騒音やゴミの分別、日系ブラジル人3世の自治会長、「日本のルールに従って」
(10)頑張る自治会長の姿に感銘、満場一致で再任 一方で、外国人住民たちには新たな不安の種が…
 
 第2部の11回からは、社会に広がりつつある「日本人第一」の空気と、その中で苦悩する人々の姿を取り上げる。
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「『従業員足りないです』って。そんなに必要ですか」移民政策反対を訴え、40代会社員が市長選に挑んだ
 第3部の23回からは、日本語が不自由な外国人の子供の教育支援を軸に「共生」を目指す取り組みを取り上げる。
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日本語の壁にぶつかり、なじめない 学校教育からこぼれ落ちた日系人の少年たち
 第4部の35回からは、親になった当時の子供たちや次世代を担う若者を取り上げる。
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月日がたった今は懐かしいが…本当は逃げ出したかった小学校 サポート乏しく、日本語分からず孤立

 マスクを着けた高齢の日本人や働き盛りの若いベトナム人、幼い子供を連れたネパール人らが、所狭しと並んだパイプ椅子に腰掛ける。時折、赤ちゃんの「あー」という声が響いた。
 緑町住宅は2月1日時点で入居する77戸のうち、外国人住民が7割超の55戸を占める。国籍はブラジル、ペルー、パラグアイ、ボリビア、ベトナム、フィリピン、ネパール、インドネシアの8カ国。ブラジル出身者が最も多い。
 住民と向かい合う長机には5人の自治会役員が横一列に陣取った。このうち4人は外国にルーツを持つ。
 「今日は共益費と駐車場のことで、集まってもらいました」
 定刻をやや回った午前9時過ぎ、ブラジル出身の日系2世で自治会長の江藤裕希子(50)が、口を開いた。

言葉の壁、思うように進まぬ総会

 住宅や工場が並ぶ一角に立つ愛知県西尾市の「県営緑町住宅」は、5階建ての3棟に日本人のほか、ブラジル人やベトナム人など8カ国の出身者が暮らす。今年2月1日、集会室で全ての住民を対象にした臨時総会が開かれていた。
 議題は、自治会が自治会費(400円)と一緒に集めてきた共益費(1600円)と駐車場代(1500円)の徴収を、県に移管するかどうか。全戸に出席が義務づけられ、日本語とポルトガル語、タガログ語、ベトナム語で書かれた「お知らせ」には「欠席の場合は罰金(3千円)を徴収いたします」と書かれていた。
 背景には、一部の住民による滞納がある。自治会にとって、各戸を回っての徴収は負担が大きい。「大家」である県から、徴収や駐車場の管理を県に任せてはどうかと打診を受けていた。ただ、県管理になると料金設定の仕組みが変わるため、利用者の負担が増える可能性がある。さらに、自治会費自体の徴収は、引き続き自分たちが担うことになる。そこで、「話し合おう」となったのだった。
 しかし、臨時総会は言葉の壁もあり、思うように進まない。まずは、ブラジル出身の自治会長、江藤裕希子(50)が日本語とポルトガル語で説明。続いて英語が堪能なブラジル人住民が、フィリピン人やネパール人らに向けて英語に訳す。その後、日本語の分かるベトナム人住民がベトナム語への翻訳を試みる。ただ、正確に伝わっているかどうかは微妙な雰囲気だ。
 日本人の自治会役員で顧問の青木忠雄(78)が「みんなの意見を聞きたい」と問いかけるも、住民たちの反応は薄い。
 たまりかねた古参の日本人住民で、元自治会長の川部国弘(74)が立ち上がり、易しい日本語で「ここ何年か、払わない人が増えていて役員さんは困ってます」と伝えた。役員の一人でペルー出身のエルナニ・セザル(58)も、自治会費や共益費の負担は「日本の習慣だもんで覚えてください」と三河弁交じりの日本語で呼びかけた。
 自治会によると、滞納者は十数人で、滞納額は計約70万円。何年も払っていない人もいるという。説明が続く中、高齢の日本人住民が言い放った。
 「(滞納者は)出て行ってもらった方が良いんじゃないの。そんな性格の悪い野郎はベトナムだら、どうせ」
 その一言に、役員たちは一斉に色めき立った。
 「ちょっと待ってよ」
 「ベトナム、滞納者いないよ」
 「かわいそうだよ」
 川部も苦笑いを浮かべながら「何人(なにじん)とかじゃないの。払わない人がいけないの」とたしなめた。臨時総会は1時間ほど続き、議論は深まらないままお開きとなった。

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