【阪神連覇】藤川球児監督 栄冠の陰に佐藤輝と森下の“ボイコット騒動” 響いた怒声「何度言わせるんだ」

[ 2026年10月4日 07:00 ]

セ・リーグ   阪神4─6広島 ( 2026年10月3日    マツダスタジアム )

<阪神祝勝会>ビールをかけられる藤川監督(中)(撮影・岸 良祐)
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 阪神・藤川監督は子供のころ、巨人ファンだった。「平成の大エース」斎藤雅樹に憧れ、「自宅のテレビは巨人戦が流れていた」。“初恋の相手”を振り切って、球団初のセ・リーグ連覇を達成。しかし、その道のりは平坦ではなかった。

 ライバルの敗戦で優勝が決まると、「苦しかった」と言葉を詰まらせた。宿舎の宴会場から選手がどんちゃん騒ぎで出てきたのとは対照的に、その目は潤んでいた。

 「自分を育ててくれたタイガースへの恩返しで、この監督業を引き受けた。恩返しというのは、勝ちを届ける、選手たちに苦労をさせない。首脳陣で悩んで、選手を飛躍させるように挑戦し、最高の結果になった。やってきたことが間違いではないと証明できた」

 8月に工藤を守護神に据えたことで、不安定だったブルペンに1本の芯が通った。「間に合うかどうか、あの時点が勝負だった」。9月に今季最長の7連敗を喫し、巨人にゲーム差なしの勝率7毛差まで迫られた。その最終局面で、2年目右腕を点差にかかわらずフル稼働させ、勝利を積み重ねた。7月26日以降、首位を1度も明け渡さなかった。

 「自分も現役の時に重責を背負って、それが苦しくて敗れ去ったことがあった。ハイパフォーマンスの選手たちを守ることが一番。責任をこちらが引き取って、選手を笑顔にすれば、必ず抜けるんじゃないかと思っていた」

 独走だった昨季と違い、いら立ちが何度も表に出た。事件が起きたのは8月16日の広島遠征。試合前、ベンチ裏に藤川監督の「何度言わせるんだ」という怒声が響き渡った。

 シートノックに、佐藤輝と森下の姿がなかった。

 2人は以前から、疲労軽減を理由にシートノックの「欠席」を申し出ていた。だが、藤川監督はその都度「甘やかしすぎ」と却下してきた。またその話か――。選手の中には、「2人がボイコットした」という不穏な空気を感じ取る者もいた。

 「凡事徹底」が信条の藤川監督は妥協を許さないリーダーだ。
 「厳しい指導は、その時は好かれないかもしれないけど、いなくなった時に気づく。こういう厳しい世界で生きてきて、優しかった指導者の方は残ってないのでね。記憶に」

 その指導は細部にまで及ぶ。今季、自軍投手陣の映像を徹底的に分析して一人一人の癖をあぶり出し、本人に対策を求めた。才木は「そのおかげで癖を逆手に取ることができた。見直すきっかけになった選手もいたと思う」と話す。

 ただ、佐藤輝と森下にも言い分があった。

 猛暑のシートノックは負担が大きい。しかも、体の治療の時間に充てていた2人には、コーチに許可を取ったという認識があった。

 すれ違いを埋めるべく、試合前にコーチ、フロント同席で話し合った。藤川監督は「君たちが引っ張ってほしい」と伝えた。佐藤輝とは、次の京セラドームで、今度は2人で膝をつき合わせた。

 選手への配慮は、佐藤輝に限らない。3月には、大山を呼んで食事をした。「5番中川、6番大山」の打順を組む前に直接伝えた。たとえオープン戦であっても、“格下げ”と思われないよう、気遣った。

 広島での一件を経て、シートノックは当面、カード初戦だけの実施になった。佐藤輝は「そういう形にしていきたかったので、話せたのは良かった」と振り返る。

 運用が変わったことが大事なのではない。首脳陣と選手との間にあったわだかまりが和らいだ。この小さな変化もまた、苦しい最終局面を乗り切る一助になった。

 厳しさと「選手ファースト」のはざまで揺れた1年は、球団初の連覇という形で報われた。次に目指すのは、昨年逃した日本一。また、勝利のために全てをささげる日々が始まる。(倉世古 洋平)

 ○…阪神が25年に続くリーグ2連覇。阪神の優勝は通算12度目(1リーグ4度、セ・リーグ8度)。2年連続制覇は1リーグ時代の37年秋、38年春以来88年ぶり2度目で、セ・リーグ連覇は球団史上初。

 ○…藤川監督は就任1年目の25年からリーグ連覇。監督初就任からの連覇は36年秋、37年春の藤本定義(巨)、86~88年3連覇の森祇晶(西)、21、22年の中嶋聡(オ)、24~26年3連覇の小久保裕紀(ソ)に続く5人目。セ・リーグ監督、投手出身監督では初めて。

≪祝勝会場に用意されたビールは約3500本≫
 ○…2年連続のビールかけで、猛虎に笑顔が広がった。秦雅夫オーナー、粟井一夫球団社長、藤川監督があいさつし、今季から選手会長に就任した村上の「阪神タイガース、初連覇!」のかけ声で始まった歓喜のひととき。今季限りで現役を引退する西勇やベテランの糸原が胴上げをされ、森下が鼻血を出す一幕も…。広島県内の祝勝会場に用意された約3500本のビールは、屈強な男たちによって一瞬にして消えていった。

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