ちばてつやさん 「小さなことでもいい。一生懸命やり切った後に必ず次がある」 読者への温かい目線

[ 2026年10月28日 05:27 ]

ちばてつやさん死去

 インタビューに答えるちばてつやさん=6月、東京都練馬区
Photo By 共同

 「あしたのジョー」「おれは鉄兵」などのヒット作で知られる漫画家ちばてつや(本名千葉徹弥=ちば・てつや)さんが22日午後、骨髄異形成症候群のため都内の病院で死去した。87歳。東京都出身。

 【悼む】コーナーポストの丸椅子に腰かけ、真っ白になったジョー。うつむき加減でほほ笑む横顔は穏やかだ。生きているのか死んでいるのか…。今もファンの間で論争が続くラストシーン。ちばさんを初めて取材したのは2015年、戦後70年の企画だが、この場面への思いを聞かずにいられず、話さずにいられなかった。

 「僕はジョーのような生き方をできていません…すみません」。話の流れで半分本気、半分冗談で謝罪した。パンチドランカー症状にむしばまれた体で世界戦に臨むジョー。同じ症状の盟友の痛ましい姿が描かれただけに、悲劇的な最期がよぎった読者も多いはずだ。だがジョーはリングに上がる。己の全てを信じた道に、宿命にささげる。真っ白に燃え尽きたジョーは美しく、少年時代の記者は憧れ、シビれたものだ。そんなふうに生きたいとも思った。だが、気付けばジョーの対比で描かれた“海に山に青春を謳歌(おうか)する不完全燃焼な若者”になっていた。

 そんな記者にちばさんがかけてくれた言葉が忘れられない。「例えば毎日の宿題とか仕事とか、頑張ることは何でもいいんですよ。小さなことでもいい。一生懸命やり切った後に必ず次がある。読者にそう思ってほしかった」。教師になりたかったという、ちばさんらしい言葉だった。とかく純文学のようにあがめられがちな作品。だが、それはちばさんの本意でなかったのかもしれない。少年読者への温かい目線を忘れないちばさん。そんな漫画家が、悲劇的なラストを描いたとは思えなかった。

 理想家で理論派の梶原一騎(高森朝雄)の原作と衝突を繰り返して生まれた名作。ジョーという人間自体が二面性を持って描かれた気もする。だが考えてみれば生の人間もそうだ。揺れ動いて生きている。ラストを巡る解釈は人それぞれ。

 “真っ白なジョー”の顔と体は左に向いている。右から左に読み進む“漫画の文法”でいえばジョーは未来を見ているという解釈もある。記者は、あの日のちばさんの言葉から、ジョーは次の道を歩いていると思っている。 (文化社会部デスク・岩田 浩史)

続きを表示

この記事のフォト

「美脚」特集記事

「【VIVANT考察】最新ニュースを随時更新」特集記事

芸能の2026年10月28日のニュース

タグ内の最下位に記述をオススメします ここから-->