【内田雅也の追球】大目標が支配する日々

[ 2026年9月3日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神3―5ヤクルト ( 2026年9月2日    神宮 )

失投を悔しがるセベリーノ
Photo By スポニチ

 阪神は得点をあげた3回表と9回表を除き、残り7イニングが3者凡退だった。それでも、いつか逆転するのではないかと感じられた。結局敗れるのだが、最後まで勝利に向け、集中力を切らさずに戦っていた。

 これが優勝に向かうチームである。優勝という大目標があるため、選手それぞれが自分のやるべきことに注力できる。監督・藤川球児がいう「没頭」なのかもしれない。

 「目標がその日その日を支配する」は今夏8月17日に他界した元横浜高監督・渡辺元智の座右の銘である。もとは社会教育家・後藤静香(せいこう)の詩『第一歩』だという。<十里の旅の第一歩/百里の旅の第一歩/同じ一歩でも 覚悟がちがう/三笠山にのぼる第一歩/富士山にのぼる第一歩/同じ一歩でも 覚悟がちがう/どこまで行くつもりか/どこまでのぼるつもりか/目標がその日その日を支配する>

 下位に低迷するチームだと時に目標を見失い、集中力も落ちていく。

 いまヘッドコーチの和田豊は現役当時、いわゆる「暗黒時代」が長かった。そんな時、モチベーションの保ち方に工夫していたそうだ。

 「僕はアニバーサリー(記念日)的な“きょうは○○だから頑張ろう”という理由づけをしていたように思います。しょうもないことでいいんです。たとえば……」と、2005年発行の『阪神タイガース70年史』(ベースボール・マガジン社)で語っていた。ちなみに、この日は和田64歳の誕生日で、そんな理由でも構わない。何か奮起する理由がほしかった。「でも、本来は“優勝”という大目標があって、その前に小さい目標があるべき」と語っている。

 4回途中4失点で敗戦投手となった先発・西勇輝も、2度目の先発起用で左翼を守り、無安打だったキャム・ディベイニーも、救援登板で失点したアンダーソン・セベリーノも……チームの目標と、それぞれの目標の前で懸命だった。それは伝わってきた。

 三原脩の名言に「アマは和して勝つ。プロは勝って和す」とある。優勝という大目標の前では全員が一つになれる。

 だから藤川も「ゲームの形としては、悪くはなかった」と話したのだ。「負けはしましたけど、明日も前向きに挑戦できると思います」。明日もまた大目標が目の前にある。 =敬称略=
 (編集委員)

続きを表示

「阪神」特集記事

「大谷翔平」特集記事

野球の2026年9月3日のニュース

タグ内の最下位に記述をオススメします ここから-->