MLBをハックしたブルワーズの「スモールベースボール2・0」 色川冬馬スカウトが見た米国野球の進化

[ 2026年10月28日 10:50 ]

ブルワーズで国際スカウトを担当する色川冬馬氏
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 ナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS)でドジャースを4連勝で退け、44年ぶり2度目のワールドシリーズ(WS)進出を決めたブルワーズの勢いが止まらない。

 ブルワーズの今季年俸総額は30球団中19位の1億4350万ドル(約227億円)。2位ドジャースの3億3800万ドル(約534億円)の半分にも満たない。それでもメジャー最多の103勝を挙げ、そして、球団初の制覇を目指すワールドシリーズは3連勝で第4戦を迎えた。同球団で国際スカウトを担当する色川冬馬氏に快進撃の秘密を聞いた。(前編 聞き手 アマチュア野球担当キャップ・柳内 遼平)


――ブルワーズの快進撃、そして日本のMLBファンへの反響をどう捉えている。 

 「組織としてコツコツと積み重ねてきたことを少しずつ日本の皆さんにも知っていただけているというのは誇らしいことだなと思います。特にドジャースを4連勝でスイープ(全勝)したというのは衝撃的だったと思います」

――バントや盗塁といった小技が印象的。

 「今、ブルワーズの野球について日本国内でも研究が始まっていると思います。データやセイバーメトリクスといったものを駆使した、このメジャーリーグ野球の戦国時代の中でブルワーズがやっていることは“両輪”を回している点にあります。“両輪”というのは日本がやってきたような細かいことをしっかり積み重ねていくということ、それと同時に今の時代のルールや知識に沿った新しい挑戦をすることです」

――新ルールを味方につけた「新しいスモールベースボール」が機能している。「マネーボール」における盗塁やバントはそんなに価値のないものとされてきた部分ではある。

 「1つはベースが大きくなりましたよね。もう1つはけん制球の回数制限。プラス、やっぱりアメリカって日本ほどけん制やクイックが上手じゃない投手が多いんです。強い球を投げるということに集中しているので。それをある意味うまく逆手に取って盗塁にチャレンジしていく。そういう選手たちが非常に多いというのは1つの強みであります。また、バントや盗塁といった小技だけではなく、しっかりストライクに対して強いスイングでアプローチできている。内野ゴロ1つとっても、しっかり振った強い内野ゴロが行く。やはり強い打球というのは相手のミスを誘うんですよ。これをひたすら繰り返していく。そうするとどんなに優秀な投手であってもジワジワとボディブローが効いてくる。そこの綻びを見逃さない、というのがブルワーズ野球の1つの魅力、勝ち筋なんじゃないかなと思います」

――かつての“マネー・ボール”の進化させた形。

 「そういう意味では“令和版マネー・ボール球団”という感じですよね。データ分析のその先にある、ルールの変更に合わせた超合理的な最適解を狙い通りにやっているんだなと感じます。よくブルワーズの野球は日本のスモールベースボールだと言われますが、言うならば“スモールベースボール 2・0”。しっかりとセイバーメトリクスの考え方、最新のデータ、メカニクスの理論をベースに落とし込んだ上で小さなことをしっかり積み重ねていこうと実践している。これが我々の最適解であり、監督が得意とする組織の引き締め方なんです。深いところまで調査し尽くした情報をベースにしてどう戦うか。単に日本の昔ながらの野球をそのままやっているわけではないんです」

――アメリカ野球の進化のスピードをどう感じる。

 「僕は日本人としてちょっと悔しいです。アメリカから学んでいる自分自身に対しても正直、悔しさがあります。かつては、トーナメントを勝ち抜くための堅実な野球は日本の“お家芸”と言われていた。しかし、日本がアメリカのパワーゲームに憧れて磨いている間にアメリカはさらにそのパワーゲームを倒すための方法論を突き詰めて、この”スモールベースボール2・0”の領域にたどり着いているわけですから」

――一スカウトとして内部から見えるブルワーズとは。

 「本当に人を大事にする球団で、組織論がしっかりと浸透している球団なんです。それぞれの役割、多様な人材、立場、バックグラウンドを持つ人たちが活躍できる組織。トップチームを見ていただくとよく分かるのが、もの凄く“ダイバーシティ(多様性)”。監督は66歳。(外野手の)チョウリオは22歳、(16勝を挙げた)ミジオロウスキーは24歳、(11勝の)ヘンダーソンも24歳。フランチャイズプレーヤーとして位置づけられている地元のスーパースター、クリスチャン・イエリッチが34歳。そこに移籍で入ってきて花が開いた選手らが融合している。強い理念と信念で、監督がチームを率いている。本当に普通の高校野球がやっているようなことをやっているんです」

――色川氏は日本の独立リーグのBC・茨城アストロプラネッツでGMを務め、25年からブルワーズのスカウトに就任。きっかけは。

 「ブルワーズは(色川氏が代表を務める)アジアン・ブリーズで試合をさせていただいていた球団の1つだったんです。それで国際部長、今の僕の上司にあたる方とお会いしました。僕が茨城を辞任するタイミングで“将来、日本のプロ野球のGMを目指しているんだけれども、やはり僕にはまだまだ大きな世界での経験と実績が足りない。だからメジャーリーグの球団で勉強させてもらいたいんだ”という相談をしたのがスタートでした」

 後編では球団初となる駐日スカウトとしての活動の日々に迫る。 

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