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回復につながる物語

2026年10月17日 05時05分 (10月20日 16時38分更新)
藤原辰史さん(奥(右))と山秋真さん(奥の右から2人目)の回りに、参加者たちがゆるやかな円を描いて座り対話を重ねた=珠洲市で

藤原辰史さん(奥(右))と山秋真さん(奥の右から2人目)の回りに、参加者たちがゆるやかな円を描いて座り対話を重ねた=珠洲市で

 先週ここでも紹介させていただいたイベント「“ここで生きるための言葉”をさがして」が無事終了しました。当初予定していた定員の倍、40人余りの方がご参加。午前10時開始にもかかわらず、遠方は金沢や富山からもお越しくださいました。
 ゲストのお一人、京都大学人文科学研究所教授の藤原辰史さんは、今回が初めての能登だということで、無理言って前日入りをお願いし、珠洲原発の建設予定地の一つだった高屋集落の方や、珠洲で専業農家を営む親子、発災後早くから営業再開した銭湯の経営メンバー、仮設店舗で元気に営業を続ける書店の方などに会ってお話を聞いていただきました。
 ゲストのもうお一方であるノンフィクションライターの山秋真さんは、神奈川県出身・在住の方です。大学4年生の時に初めて珠洲を訪れ、以来何度も通うように。卒業後は世界を見てまわろう、と思っていたけれど、珠洲原発の建設が一つの争点となった選挙やその後の裁判などを見て「見るべきものは珠洲にある」と思ったと言います。「この地域にもともと暮らしてきた人たちが、その宝を大事にしている。だから原発はいらないのだなあと思った」と当時の様子を振り返りながら、あの時の意味をふまえた能登の復興を考える中で、藤原さんのご著書『生類の思想 体液をめぐって』の考え方に共感したというお話があり、バトンが渡されました。
 藤原さんは、前日のフィールドワークを主軸としながら「傷、トラウマ、PTSD」「回復」「神話、物語」の3つについてのお話でした。中でも私が興味深かったのは、「回復とは、境界をつくり直すこと」という藤原さんによる定義です。たとえば、病気の回復。ウイルスに感染し、体内がかく乱し、さまざまな体液が流れ、そしてまた整え直す。それは、病気になる前の体とは違った体であると。それを地域に置き換えて考えてみる。自分たちはどんな枠の中に生きてきたのかをとらえ直すこと。また、回復のために重要な役割をするのは「物語」。深い傷を負った人が物語ることが回復につながっていくということ、そこから「自治」を考えるお話でした。
 後半は参加者からの質問を受けてのお話。私は、藤原さんの話の中で出てきた「自治」について、もう少し詳しく聞きたいと手を上げました。『ためされた地方自治』という本で珠洲原発のことを書かれた山秋さんからは「生殺与奪の権をゆだねないこと」、藤原さんからはいろいろお話いただきましたが、特に「自分たちのルールをたくさん作ること」だという言葉に地域で生きていくヒントをもらったような気持ちです。(湯宿経営)
なのはな日和

 石川県珠洲市で湯宿を営む坂本菜の花さんの連載コラム。北陸の天気のようにままならない日々を、自分らしく暮らしていく記録です。

なのはな日和

 石川県珠洲市で湯宿を営む坂本菜の花さんの連載コラム。北陸の天気のようにままならない日々を、自分らしく暮らしていく記録です。

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