「急に具合が悪くなる」を観て
2026年7月4日 05時05分 (7月7日 10時23分更新)
3時間、涙が乾くことなく流れ続けました。映画『急に具合が悪くなる』を観(み)ました。フランスの介護施設で理想的な介護の在り方を追求するマリーと、フランス公演中の舞台の演出家であり、ステージ4(ローマ数字の4)のがん患者である真理が出会う話です。天邪鬼な私は、話題になっている作品であればあるほど、観るまで少し時間を置くのですが、この作品のキーワードである「ユマニチュード」にものすごく興味を持ったので、母も誘い、日帰りで富山の映画館まで観に行ったのでした。
ユマニチュードとは何か、パンフレットの説明を一部引用します。「フランスの体育学者イヴ・ジネスト氏とロゼット・マレスコッティ氏らが1979年から開発してきた、ケアの哲学・技法。医療や介護の現場において、ケアを受ける人を『対象』ではなく、感情や意思をもつひとりの『人間』として捉える姿勢を明確にした。認知症や高齢者のケアの場で実践できるように、哲学を具体的な技術に体系化し、現在では、教育や看護の分野でも徐々に普及している」
映画の最初のシーンは、マリーがディレクターを務めるパリ郊外の介護施設「自由の庭」。認知症と思われる入居者の女性が、庭に歩いて出て行くのを、男性職員が力ずくで中に戻そうとしているところ、マリーが止めに入り、まずはその女性の目と同じ高さに自分の目を持っていき、力んでこわばっている女性の肩にゆっくりと触れる。よく見ると、女性の足元には指人形が落ちている。マリーはそれを拾い、女性に渡し、今日は気持ちが良いからお散歩日和ですね、というような言葉をかけながら、ゆっくりと一緒に中へ向かう。
開始5分ほどのこのシーンを観ただけで、涙がこぼれてしまいました。思い出しただけでも泣ける。ほかにもたくさん伝えたいシーンはあるのですが、それは劇場でぜひご覧ください。
ここからは私の感想です。認知症になっても、重度の障害があっても、ひとりの人間として尊重される。まさしく日本国憲法13条のことだと思いました。「すべて国民は、個人として尊重される」。これは、マニュアル化できないことです。同じ認知症の人であっても、それぞれの人生がある。いや、違うな。むしろこの作品は健常者ってなんだろう。障害者ってなんだろうと問いかけているのかも。真理が演出した舞台のタイトルは「Da vicino nessuno é normale.(近づいてみれば、誰もまともな者はいない)」です。ぜひ。(湯宿経営)
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